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次回配信日は、7月1日です。




利尻富士(永田英司画)


大花延齢草(永田英司画)


黒百合(永田英司画)


スケッチする私

 日本列島最北端の地、利尻島と礼文島を五月中旬すぎに訪れた。布教活動の一環として、春季法要の魚鱗供養会に招かれての旅行だった。
 飛行機で利尻島に近づくと、日本百名山に選ばれた秀峰、利尻山の勇姿が窓下に迫ってきた。標高は一,七二一メートル、利尻富士とも呼ばれる青々とした山容は、未だ冠雪を抱いていた。本土とは大きく異なった風景や花々に出会う、さいはての地の旅の始まりだった。

 利尻島は島そのものが海面に突き出た山であるため、山麓が海岸線ということになる。一時間半ほどあれば車で一周できるのだが、仰ぎ見るたびに山の表情が変わるほど、その姿・かたちは複雑だ。緯度が高いために高山植物が平地に咲いており、高地の湿原でなければ普通は見ることのできない、水芭蕉や座禅草などもそこかしこに群生している。
 そのような自然環境のなか、やはり初めて見る花々が多かった。利尻町立博物館で学芸員を務められる西谷榮治さんの案内がなければ、自分ひとりではきっと見過ごしていたことだろう。花を愛する地元の人の視線で、私は花を見ることができたのだと思う。
 裾野には利尻山からの恵みのように渓流が滔々と流れ、その周囲には黄金色に輝く蝦夷立金花(エゾリュウキンカ)が咲いていた。そして風の強い海岸近くの崖では、大花延齢草(オオバナエンレイソウ)が生息していた。いずれの花々もとても清楚で、しかも野生の力強さを感じさせてくれるものだった。
 礼文島に渡り、利尻島で描いた花のスケッチを、宿泊先を経営するご夫婦に見ていただいた。するとお二人は目を輝かせ、翌日の早朝に花畑を案内してくれることになった。
 北国の日の出時間は早く、午前四時まえには日が昇る。空気はぴんと澄みわたり、湿原のある場所に黒百合が群生していた。これもまた、初めて目にする花だった。早朝の湿原に残り、ひとりでスケッチをしていると、周囲の自然の音に包まれているのに気づいた。さまざまな鳥の声や、水がさらさらと流れる音。目のまえにひろがる風景のなか、その自然とひとつになっていくような心地だった。
 蝦夷延胡索(エゾエンゴサク)が群生している場所も、宿のご夫婦は教えてくれた。本当の意味での日本最北端にあたる、スコトン岬というところだ。はやる気持ちを抑えながら、車でその場所へ向かった。そして丘の上に出ると、風の吹く岬に背丈十センチほどの、エゾエンゴサクが咲いているのが見えた。風に踊りながら、青や赤の小花を笹の野原に咲かせてくれていた。
 そしてその日の午後晴れ間がさし、礼文島からの利尻富士を眺めわたすことができた。海の向こうにそびえ立つその全容は、優しく雄大なものだった。
 利尻島そして礼文島の厳しい自然に暮らす人々と佛縁で結ばれたおかげで、その自然の素晴らしさに触れることができた。雪解け水が豊かな早春に咲く、淡い色彩の花々。冬を終えて小さな北の島に戻ってきた、ウミネコなどの渡り鳥たち。残雪の利尻富士もまた、天候が変わるたびに千変万化の姿を見せてくれた。
 旅の者に示してくれた、島の人々の篤い信仰の気持ちと温かさ。冬の自然が厳しいがゆえに、生命の息吹を強く感じさせる早春の候。そのような風景とそこに暮らす人々のありようは、現世で感じる浄土ではないかとも思った。

 国内開教使・桂林寺住職  永 田 英 司








 この春、目通り幹囲4メートルはあろうかという欅の木の芽が吹かない。樹齢は百年を超えているであろうか。このまま台風シーズンを迎えると、一抱えもある枝が落ちてくる危険性がある。お寺の役員とも相談をして、残念ではあるが、早速にも伐採することとなった。昔は境内地の隅に静かに生えていたのであろうが、戦時中は近くに2発もの焼夷弾をあびた。寺が小高い丘の上のところにあるため、戦後は、そのすぐ脇に自動車を通すための道が作られた。ここ何年か、大方の葉が虫に食われてしまう事件が何度かあった。ほかにも住職の把握できない原因があったのであろうか、その生涯を閉じられたのである。魚尾姓が願成寺の住職を勤めるようになっておよそ百年であるから、ともにお寺を見守ってきたことになる。

 近くには公道や建物があるので、そのまま切り倒すことはできない。上から少しずつ切っていくことになる。25トンのクレーン車、25メートルの高所作業車が運び込まれる。多くの人たちが見守るなか、チエンソーが鳴り響き伐採が始まる。最初の大きな枝が、その幹から切り離されると、大きなため息が漏れた。夕暮れ時にはすべての伐採を終えて西に傾きかけた夕日の光が後光のようにさし込み、木を切ることを命じたわたしには少し眩しかった。

 ところで今回の伐採にあたって、工事関係者から工事前の「供養」を願われた。一般の道路工事であっても、そこに塚などがあるとよく供養を頼まれる。道々の袂などには旅の途中でなくなった人や牛馬の供養碑がたてられており、工事にあたってはそこに祀られている人や動物の供養するのである。どのように供養すればよいのであろうか、そんなマニュアルはない。
 よし、表白を書こう。表白とはその法要の趣旨を述べるものである。恥ずかしいが全文を掲載しよう。

    謹み敬って願王阿弥陀如来、撥遣教主釈迦牟尼世尊、並びに
   一切三宝に白して云さく。
    それ我が国に仏教の伝来有ってこの方、東大寺大仏開眼およ
   び国分寺の建立と、さらには聖徳太子ならびに聖武天皇の仏教
   を礎とする政(まつりごと)、またさらには光明皇后の社会福祉と、
   歴史の中における仏教の興隆なるは、皆の首肯するところなり。
    そのなかにあっても法然上人のご出現は念仏の法門のみ教え
   によりて、生きとし生けるものの極楽往生を現したり。
    そのみ教えの場としての天主君山現受院願成寺にあっては、三
   嶋大社宮司矢田部家護持のもと、その存在を全うせり。昭和三十
   三年には山本建設によりて本堂の建立、平成元年には観音堂の
   建立、さらには平成二十一年には法然上人八〇〇年遠忌事業と
   して書院庫裏の建設を成し遂げますます念仏道場として興隆た
   り。
    しかるに願成寺の隆盛を見守られし、欅の古木が、いまその命
   を終えんとす。ああ悲しいかな悲しいかな、しかし悲しいなかにも
   、終焉の全うを賛嘆するものなり。
    いまここに願成寺第五十九世孝久みずから、倒木のための斧
   を振るうものである。その亡骸は自ら立ちし所にて眠り、末代に渡
   っての守護せしめ給わんことを。
        維時 平成弐拾参年月六月九日
                        願成寺第五十九世孝久 敬白

 今まさしくその生涯を閉じた欅の木に対して、まず百年ものあいだお寺を見舞ってくれたことの感謝を、そして住職みずから斧を振るってこの伐採をおこない、まさしくその木の終焉であることを告げること、さらには伐採終わったその亡骸は処分することなく立ちしその場に置くので、今までと同じように願成寺を見守ってほしいことを述べたつもりである。
 一日中、外にあってひとつ一つの枝が下ろされ、最後の太い幹が切られるまですべてを見届けた。それが住職の責務に思えたからである。緊張して長い一日であったが、晩酌はいつもより美味かった。見上げていた首が少し痛い。

【目通り幹囲】めどおりかんい
樹木の幹まわりの寸法。多く、人間の目の高さ付近で測り、特にこれを目通り幹囲という。

【焼夷弾】しょうい‐だん
敵の建造物や陣地を焼くことを目的とした砲弾や爆弾。可燃性の高い焼夷剤と少量の炸薬(さくやく)を充填(じゅうてん)する。黄燐(おうりん)焼夷弾・油脂焼夷弾・エレクトロン焼夷弾などがある。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


枯れた欅


伐採作業









東北地方太平洋沖地震義援金のご報告

 お彼岸のあいだ玄関でお寄せいただきました「東北地方太平洋沖地震義援金」 と 観音堂大祭の経費の一部を、浄土宗を通し見舞金といたしまして被災された方々にお送りいたしました。誠にありがとうございました。

「義援金箱」
      77,303 円
「観音堂大祭経費」
     100,000 円

 

第301回 辻説法の会

 お茶を飲みながら、法話をお聴きになりませんか!

日   時
6月17日(金) PM7:00〜8:30
会   場
茶房「 欅(けやき) 」 2F TEL:055-971-5591
講   師
福泉寺住職 岩佐 善公 師
参 加 費
無料 (飲み物は各自でお支払いください)
主   催
県東部青少年教化協議会(この会は、特定の宗派にこだわらず、
ひとりでも多くの方々に仏教を伝えることを目的に活動する団体です。)
次   回
7月22日(金) 同時刻  願成寺住職 魚尾 孝久 師

 

墓地清掃

 恒例となりました、お盆の墓地清掃をおこないます。檀信徒総出でのお掃除の機会でもあり、また、「そうめん流し」も用意いたしておりますので、ご家族とともにご参加いただけますようお願い申し上げます。

日   時
7月3日(日) 9時より(雨天決行)

 

7月のお盆棚経

 お盆の棚経は、「ご自宅へ伺っての棚経」 と 「お寺での棚経」 とがあります。7月上旬にハガキにてご案内申しあげますので、ご希望をお知らせ下さい。

「ご自宅での棚経」
7月13,14,15日のうちお伺いする日を連絡します。
「お寺での棚経」
7月13日10時、13時いずれかに本堂へ。
前日までにお電話で連絡をお願いします。

 

お盆灯籠流しの販売

 7月16日、三島市仏教会主催の「灯籠流し」が水泉園(白滝公園)でおこなわれます。7月3日より、灯籠を販売いたします。

 

 


お 願 い

 今まで、お塔婆や香花等は、寺にて焼却しておりましたが、法改定により、平成14年12月1日から「野焼き」や「簡易焼却炉」によります、すべてのごみ等の焼却ができなくなりました。現在、願成寺にあります3基の焼却炉もすべて使用禁止となり、撤去いたしました。
  したがいまして、今後、墓参の折いらなくなりましたお花などのゴミにつきましては、下記のごとく、ご処理をいたしたく存じますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。



ゴミの分別

 ゴミは、次の4種類に分別してお出し下さい。

「燃えないゴミ(ビン・カン)」
市のゴミに出します
「土に返すゴミ(花・香花)」
寺にてチップにして土に返します
「土に返すゴミ(草・落ち葉)」
寺にて土に返します
「燃えるゴミ(紙・ビニール)」
市のゴミに出します

いらなくなりましたお塔婆は、寺にてチップにして土に返しますので、ゴミ箱の脇にお置き下さい。
ゴミ箱は水屋(水道)の近くに用意いたします。
飲物や食べ物は、動物が散らかしますので、お参りの後はお持ち帰り下さい。
お手数をおかけいたすことばかりでございますが、ダイオキシンをなくし、きれいな地球環境のため、切にご理解とご協力をお願い申し上げます。








▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。







 ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

 天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久


 







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