ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月一回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。


天主君山現受院願成寺住職

魚 尾  孝 久


願成寺参道に大きな「楠木」が対峙している。北側の木は目通り6メートル、南側の木が目通り 4.4 メートルで、三島市指定の天然記念物となっている。近在では大きな楠木で対峙しているところに特徴がある。先代住職はよく「願成寺の山門である」という。

 この半世紀の間に、願成寺の木々も多くが消えていった。松の木は戦時中の供出があった。残った松も戦後は松食い虫による被害、落雷や台風での倒木と、また参道整備による伐採と減少の一途をたどった。現在は山門がわりの楠木は別として、目通り3メートルほどの欅や楠木が数本ほど元気に育っている。

 樹木が少なくなたとはいえ、落葉の季節は掃除が大変である。秋、紅葉や欅の落ち葉を掃いていると、「大変ですね」と声をかけてくれる。ところが、願成寺の落ち葉かたづけは4〜5月がもっとも大変な時期である。山門がわりの楠木の落とす葉の量たるや、落ち葉で地面が見えなくなる量である。ほうきで掃くのではなく、熊手でかき集めての掃除であり、この連休で峠を越えたのであろうか。

 ある老人がいう、「楠木は、子供を確認してから、親が散る。」と。楠木はまず新芽が吹いてきて、その後に落葉が始まるのであるから、春のこととなる。すると秋の落葉樹は我が子をみることなく散っていくのであろうか。いや、葉の付け根には、堅いつぼみであるがしっかりと新芽が形成されており、間違いなく春となれば新芽が吹いてくる。

 私たちにも見守ってくれる仏さまや先祖、そして親がいる。あまりにも身近であるためだろうか、時にはその存在を忘れてしまうことがある。毎日の生活は必ずしも嬉しいことや楽しいことばかりがあるのではなく、しばしば辛いことや悲しいこともある。仏さまがかならず見守っていてくれると思うと、頑張れるから不思議である。そんな気持ちをともどもに大切にしていきたい。

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▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
 現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
 ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。