時国の遺言

 今月より、願成寺様のメールマガジンに拙稿を載せて頂くことになりました後藤真法と申します。法話というより一人の僧侶として日々の雑感を綴ってみたいと思います。どうぞ宜しくおつき合い下さい。

 さて、最初から重い題材になってしまうのですが、先月、あるニュースで深く考えさせられたことがあります。発端は、七年前に起こった「山口母子殺人事件」という何とも傷ましい出来事です。
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 当時18歳の少年が水質検査を装って本村さん(当時24歳)宅に侵入し、抵抗する本村さんの妻(当時23才)と泣き叫ぶ生後11カ月の赤ちゃんを絞殺。検察は死刑を求刑するが、一、二審の判決は無期懲役。無期懲役とはいえ少年法により、7年ほどで社会復帰が可能。
(参考)産経新聞社発行 月間『正論』2000年六月号「だから私は少年の死刑を求める」
http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2000/ronbun/06-r3.html
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 そして今年の3月、死刑制度廃止を求める弁護団が法廷を欠席して、この事件はあらためて世間の注目を集めました。現在弁護団は「加害者に殺意はなかった」と事実誤認を主張しています。しかし当時18歳だった少年が友人に宛てた手紙には、反省や慚愧の思いなど微塵もなく、むしろ被害者を嘲るような内容が書かれていました。弁護団の「裁判は復讐の場ではない」という主張に対し、本村さんは「仇討ちは昔、当然認められた権利だったはず。それを司法が奪っている以上、私は極刑を求めるしかない」と訴えます。
 事件の概要を知れば知る程、私も犯人に対する怒りがこみ上げてきて、つい冷静さを失ってしまいます。しかし僧侶という立場でこの問題をどう考えるべきなのか、単なる激情だけで語っていけないことは確かです。

 思いおこすのは、浄土宗の宗祖・法然上人のご生涯です。法然上人は、幼名を勢至丸と言い、侍の子として生まれました。父の漆間時国は、地元の兵を取りしきる役職でしたから、権力者の子として何不自由ない暮らしを送っていたのですが、ある晩、源内定明という対立勢力が夜討ちをしかけ、その人生を大きく変えられます。奇襲によって漆間家は滅ぼされ、父、時国はその時の傷が元で亡くなります。わずか九歳の勢至丸は一夜にして一族崩壊、父の死、母との別離というあまりにも過酷な試練に直面する事になるのです。
 臨終の枕辺に勢至丸を呼び寄せた父、時国は次のような遺言を残します。
「お前はこの事を仇に思って、敵を恨んではならない。もしこれを恨みに思って敵を討てば、敵もまたそれを恨みに思うのだ。恨みの念は断ち切らねばならない」
 それまでの幸せな暮らしが一転、無常の世を痛感する中に「敵を恨むな」という父の遺言だけが重くのしかかります。しかし幼少の法然上人の心にしっかりと焼き付いたその原体験こそが、そののち30年以上救いを追い求めた強烈な求道のエネルギーとなり、やがて誰もが平等で、敵味方なく阿弥陀さまに救われる「お念仏」の教えに出会われるのです。

 しかしこの法然上人の御一代も、単なる美談として語る事は私にはとてもできません。何故なら、もしも自分が同じ立場になったとしたら・・例えば先述した本村さんのように愛する家族を卑劣な敵に殺されたとしたら・・この「敵を恨むな」という誡めはあまりにも残酷な教えであります。果たして敵を恨まずにいられるでしょうか?おそらく私も、僧侶の身として煩悶しながらも、このように無反省な加害者に対しては極刑を求めるしかないと思うのです。
 間違いなく言えるのは、この忌まわしい加害者との不幸な縁を二度と繰り返さないためには、ただお念仏を称え続けることしかないだろうと思うのです。

 圓通寺住職  後 藤 真 法


 浄土宗を開かれた法然上人は「南無阿弥陀仏」のお念仏であらゆる人々が救われることをお説きになられ、建暦2年(1212)1月25日、80歳をもちまして往生されました。
 毎年、法然上人のご遺徳をしのび報恩をささげます「御忌(ぎょき)」法要が厳修されております。

 毎年の御忌法要は無論のこと、特に50年ごとの御忌法要を、「大遠忌」と称しまして、特別法要が営まれて参りました。
 来る平成23年(2012)には、法然上人が往生されて800年を迎えますことから、浄土宗、総本山知恩院、増上寺をはじめといたします各ご本山では「法然上人800年大遠忌」法要の準備に着手されました。浄土宗門主知恩院門跡、中村康隆猊下は今年で100歳を迎えられておりますが、「法然上人800年大遠忌」法要の成就のために、毎日お念仏を申されております。そして、この「法然上人800年大遠忌」を勝縁といたし、「真実人生に生きる喜びを体得していただくよう勧奨あらん」ことを念じておられます。

 昨今の国際情勢を考えみますに、イラク戦争、テロ、自爆等をはじめとして各地で紛争内乱が勃発して、国連の監視団、平和維持軍、ミッションが派遣されている国や地域だけでも十数カ所に及びます。また、国連難民高等弁務官事務所によりますと、116カ国に事務所を設けで1920万人の難民の支援がおこなわれているそうです。
 国内に目を向けますと、幼い子供たちが次々と殺され、役人も大企業も偽装隠蔽の巣窟となっております。そしてジャワ島地震によります5000人を超える死者がでるなど、自然災害が追い打ちをかけております。
 まさに地球は、破滅の一途を辿っているといえましょう。

 こうした状況の中で、私たちには、何ができるのでしょうか。『浄土宗21世紀劈頭宣言』に、

  20世紀は人間の限りない可能性を信じた時代であった。科学
 技術の進歩、合理的思惟、それらは人間の生活や文化の領域
 を拡大してきた。
  しかし、一方、恐るべき核兵器の開発、国家や民族間の対立、
 地球環境の破壊、人間の欲望の肥大、家庭の崩壊、道徳や教
 育の荒廃など負の遺産もまた生じた。

  これらを引きつがざるをえない我々は、法然上人の説かれた
 「愚者の自覚」に立ち返って、これを解決すべく平和、環境、倫
 理、教育、人権、福祉などの諸問題に取り組まなければならな
 い。

  法然上人は、阿弥陀仏の本願(ほんがん)を信じて念仏をとな
 えることから、真実の生き方が生まれ、阿弥陀仏の世界へ往生
 することができると説きつづけた。そして、「南無阿弥陀仏」の念
 仏は、多くの人びとの救いとなった。
  法然上人は、煩悩(ぼんのう)にとらわれた人間の哀しみをみつ
 め、新たな救いを見出したのである。

と、あります。
 「法然上人800年大遠忌」にあたり、いま一度、法然上人の説かれました「お念仏の心」を考え、実践していこうではありませんか。

 拙寺におきましても、『浄土宗宗祖法然上人800年大遠忌』にむけまして、法然上人の顕彰、記念事業など各種計画を皆さまとともに実施いていこうと思っております。物心ともにご協力をお願い申し上げます。

国連難民高等弁務官事務所
http://www.unhcr.or.jp/

『浄土宗21世紀劈頭宣言』
http://www.jodo.or.jp/21th/index.html

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久



800年大遠忌ポスター


法然上人遺影(願成寺蔵)



 

第241回 辻説法の会

 お茶を飲みながら、法話をお聴きになりませんか!

日   時
6月16日(金) PM7:00〜8:30
会   場
茶房「 欅(けやき) 」 2F 055-971-5591
講   師
福泉寺住職 岩佐 善公 師
参 加 費
無料(珈琲、甘味などの茶菓代は各自でお支払い下さい。)
主   催
県東部青少年教化協議会(この会は、特定の宗派にこだわらず、ひとりでも
多くの方々に仏教を伝えることを目的に活動する団体です。)
次   回
7月21日(金) 同時刻  願成寺住職 魚尾 孝久 師

 

お念仏と法話の集い(第4回)

 季節が移り変わるなかで、ふと日々の生活を省みることがあります。物はあふれるほどの豊かな時代になりました。しかし一方では、その中で暮らす人々の心は、いたずらに常に何かを探し求め、必ずしも安らかな日々を迎えられているとはいえません。
 時には、争いやいがみ合いに苦しんだり、冷たい心や、わがままな心に悲しみ、ただ何げなく毎日を過ごしている自分を見たとき、そこに何か物足りなさと、やりきれなさが、心の中にひろがってまいります。
 法然上人はそんな私達に「このいたらぬ私でさえもその身そのままで救われるお念仏」のみ教えをお示し下さいました。
 この集いは、5回にわたり順を追ってお念仏のみ教えをわかりやすく皆様にお伝えする法会であります。今までの我が人生とこれからの自己を深く見つめる機会でもあります。そして何時の日か「お念仏と法話の集い」に参加してよかったと思う日が必ずやってくると思います。
 お忙しいことと存じますが、万障繰り合わせて、この機会に勝縁なりますこの集いにご参加下さいますようおすすめいたします。

日   時
6月24日(土)11時より
会   場
大乗寺  御殿場市仁杉
講   師
大正大学専任講師 林田 康順 先生
参 加 費
1,000円
申 込 み
6月10日まで願成寺に
持 ち 物
袈裟と数珠

 

墓地清掃

 恒例となりました、お盆の墓地清掃をおこないます。檀信徒総出でのお掃除の機会でもあり、また、「そうめん流し」も用意いたしておりますので、ご家族とともにご参加いただけますようお願い申し上げます。

日時
7月2日(日) 9時より(雨天決行)

 

7月のお盆棚経

 お盆の棚経は、「ご自宅へ伺っての棚経」 と 「お寺での棚経」 とがあります。6月下旬にハガキにてご案内申しあげますので、ご希望をお知らせ下さい。

「ご自宅での棚経」
7月13,14,15日のうちお伺いする日を連絡します。
「お寺での棚経」
7月13日(木)10時、13時いずれかに本堂へ。
前日までにお電話で連絡をお願いします。

 

お盆灯籠流しの販売

 7月16日(日)、三島市仏教会主催の「灯籠流し」が水泉園(白滝公園)でおこなわれます。7月2日より、灯籠を販売いたします。

 

8月のお盆棚経

 お盆の棚経は、「ご自宅へ伺っての棚経」 と 「お寺での棚経」 とがあります。7月下旬にハガキにてご案内申しあげますので、ご希望をお知らせ下さい。

「ご自宅での棚経」
8月13,14,15日のうちお伺いする日を連絡します。
「お寺での棚経」
8月13日(日)11時、本堂へ。
前日までにお電話で連絡をお願いします。

 

 


お 願 い

 今まで、お塔婆や香花等は、寺にて焼却しておりましたが、法改定により、平成14年12月1日から「野焼き」や「簡易焼却炉」によります、すべてのごみ等の焼却ができなくなりました。現在、願成寺にあります3基の焼却炉もすべて使用禁止となり、撤去いたしました。
  したがいまして、今後、墓参の折いらなくなりましたお花などのゴミにつきましては、下記のごとく、ご処理をいたしたく存じますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


ゴミの分別

 ゴミは、次の4種類に分別してお出し下さい。

「燃えないゴミ(ビン・カン)」
市のゴミに出します
「土に返すゴミ(花・香花)」
寺にてチップにして土に返します
「土に返すゴミ(草・落ち葉)」
寺にて土に返します
「燃えるゴミ(紙・ビニール)」
市のゴミに出します

いらなくなりましたお塔婆は、寺にてチップにして土に返しますので、ゴミ箱の脇にお置き下さい。
ゴミ箱は水屋(水道)の近くに用意いたします。
飲物や食べ物は、動物が散らかしますので、お参りの後はお持ち帰り下さい。
お手数をおかけいたすことばかりでございますが、ダイオキシンをなくし、きれいな地球環境のため、切にご理解とご協力をお願い申し上げます。


 

▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
 現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
 ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。

 ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月一回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久

  

 

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