日本海に沈む夕日


岬の寺


1000年けやき

 Tさんは日本海を望む岬にあるお寺の奥さん。ある晩のことです。数年前に亡くなられたご主人の前住職が夢に出てきたそうです。玄関の扉を開けてポツンと立っています。
「あなた、どうしたんですか?」
「いや、タバコを買いたいんだけど小銭がなくて………」
「あの世でもお金がいるんですか?」
「うん……。」
そこで夢から覚めました。Tさんはさっそく小銭をかき集めると湯飲み茶碗に山盛りにいれて位牌の前に置きました。そして同じように各位牌の前、仏像の前に小銭を捧げていかれました。
 夏祭りの晩、ご近所の檀信徒が集まりお寺でご飯を食べ、和やかに懇親をする行事がありました。その時、Tさんはタバコ銭の話を皆さんに紹介したそうです。すると集まった人々が、
「ああ、あの小銭はそういう意味だったんですか。うちの夫もタバコが好きだったからさっそくタバコ銭を置きます」と口々にいってお帰りになりました。それからは、岬の集落のあちこちで、小銭が捧げられた光景がみられるようになったとか。

 Tさんは今年83歳。一人で出かけるときには部屋の真ん中に2つの包みをおいて出かけるそうです。何事もなく戻ったときは、そっと押入れに戻します。2つの包みは、もし外出先で倒れても残される家族が困らないように、そしてあの世への旅立ちに備えたものです。包みの一つは、三人のお子さんそれぞれに宛てた手記、遺言、ご自身とご家族の写真帳などが入っています。もう一つの包みは、お棺に入れてもらうもの、Tさんがあの世に持っていくものです。浄衣や身の回りのもののほかに、ご主人からもらった恋文、若いときから書き続けた日記も入っているそうです。燃やしても有毒ガスが出ないように紙縒(こよ)りつづってあるそうです。であの世でご主人と仲良く昔話に花を咲かせることが、思い起こされ、なんだか、うかがっている私さえ御二人のお出会いを心待ちにしていることに微笑んでしまいました。
 Tさんにとって、あの世への旅立ちは、悲しみ一辺倒ではありません。もちろんご家族との別れはつらいことでしょうが、前住職が待っていてくださるあの世への旅だちは楽しみでもあるのでしょう。

 浄土の再会近きにあり

法然上人は、念仏を申すものは必ず阿弥陀様がお迎えに来てくださり、極楽浄土にお迎えくださると説かれます。
専修念仏の弾圧をうけて、四国に流される時、法然上人は75歳。もう根性ではお会いできないと嘆く弟子たちは、上人の身を案じて「どうか念仏往生をお説きになりませんように」と泣きながら訴えます。しかし上人は「例え殺されても、このことを言わないわけにはいかない。」そして、「この世のことは夏の夜の夢のようなはかないものだ。心配するな。浄土ですぐに会えるではないか。」とおっしゃっています。

 念仏を信じ、称える人は幸せです。Tさんはこの世にいながら、あの世のご主人と絶えず通信なさっていらっしゃるのではないでしょうか?
ところで、早くにご主人をなくされた、おばあさんが心配してある老僧に聞いたそうです。
「うちの主人は30歳であの世に行きました。わたしは90歳を越えました。向こうに行ったら孫のような主人に会うのかと思うと心配で……。」
老僧は言いました。
「大丈夫じゃ。極楽にお迎えを受ければこの世で別れたそのままのお互いで会うことができるのじゃ。」
どうです。なんだか楽しみじゃありませんか?
 倶会一所(くえいっしょ)(ともに、極楽の世界にお会いすることができる)
を信じて、「なむあみだぶつ」を称えてまいりましょう。    合掌

 観智院住職  土 屋 正 道


(前話は、願成寺ホームページ「メルマガお申し込み」のバックナンバーにあります。)

第2巻「帚木」その12

 左馬頭の体験談(浮気な女)その1

「また同じころ、私が通っておりました女は、人が柄もすぐれており、性格も本当に奥ゆかしそうで、歌を詠みますとさらさらと書きますし、かき鳴らします琴の音、いずれもたどたどしいところもなく、見聞いておりました。容貌もわるくありませんでしたので、例の指喰いの女を普段の女として、この女のところに時々隠れてあっておりましたときは、格別に心を寄せておりました。
 例の指喰いの女が亡くなりましてからは、可哀想にも思いながらも、過ぎてしまいましたことはどうにもなりませんでしたので、しばしば通っておりますと、すこし気遅れするほど好色であることが好ましくなく思いましたので、妻とすべきには思えませんで、たまに会っておりましたところ、忍んで情を交わした男がいたらしいのです。

 10月のころ、月のおもむきのある夜、宮中より退出いたしましたところ、ある殿上人に会いまして、私の車に相乗りしましたので、父大納言の家にいって泊まろうとしますに、この殿上人がいうのには、
  「今宵、私を待っている女の宿を、このまま通り過ぎてしまうの
  は、心苦しいな」
と。
 ちょうどこの女の家が道順でありましたので、築地の崩れたところから月影の宿る池が見えますと、殿上人は、
  「月でさへ宿る住処を、このわたしが通り過ぎてしまいますのは
  風情のないこと」
と、車をおりてしまったのです。

 もとより情を交わしていたのでしょう。この男はたいそうそわそわとして、中門近き廊の簀の子のようなものに腰掛けて、しばし月を見ております。菊がおもしろく色変わりして、風に競って散る紅葉の風情など、おもむきのあるように見えます。
 懐より笛を取りだして吹き鳴らし、「宿りましょう」と催馬楽(さいばら)を口ずさむほどに、音のよい和琴で調子を整えてあるのをうるわしく合わせますのは、それほどわるくはありませんでした。
 律の調子は、女がもの柔らかくかき鳴らし、御簾のなかから聞こえてくるのも、今ふうの音ですので、清く澄んだ月に似合わないことはありませんでした。


ちゅう‐もん【中門】(広辞苑)
@仏寺で、回廊正面に開かれた南大門の次にある門。
A※寝殿造で、東西の対屋たいのやから釣殿に通ずる廊の中ほどにある門。その廊を中門廊という。→寝殿造(図)。
B茶庭の内露地に出入りするための門。なかくぐり。

さいばら【催馬楽】(広辞苑)
雅楽の歌物うたいものの二曲種の一。笏拍子しやくびようし・竜笛りようてき・篳篥ひちりき・笙しよう・箏そう・琵琶びわの合奏を伴奏に数名で斉唱する声楽曲。名称は馬子歌の意、あるいは前張さいばりの転などといわれるが、定説はない。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


青表紙本源氏物語「帚木」(新典社刊)



 

第241回 辻説法の会

 お茶を飲みながら、法話をお聴きになりませんか!

日   時
6月16日(金) PM7:00〜8:30
会   場
茶房「 欅(けやき) 」 2F 055-971-5591
講   師
福泉寺住職 岩佐 善公 師
参 加 費
無料(珈琲、甘味などの茶菓代は各自でお支払い下さい。)
主   催
県東部青少年教化協議会(この会は、特定の宗派にこだわらず、ひとりでも
多くの方々に仏教を伝えることを目的に活動する団体です。)
次   回
7月21日(金) 同時刻  願成寺住職 魚尾 孝久 師

 

お念仏と法話の集い(第4回)

 季節が移り変わるなかで、ふと日々の生活を省みることがあります。物はあふれるほどの豊かな時代になりました。しかし一方では、その中で暮らす人々の心は、いたずらに常に何かを探し求め、必ずしも安らかな日々を迎えられているとはいえません。
 時には、争いやいがみ合いに苦しんだり、冷たい心や、わがままな心に悲しみ、ただ何げなく毎日を過ごしている自分を見たとき、そこに何か物足りなさと、やりきれなさが、心の中にひろがってまいります。
 法然上人はそんな私達に「このいたらぬ私でさえもその身そのままで救われるお念仏」のみ教えをお示し下さいました。
 この集いは、5回にわたり順を追ってお念仏のみ教えをわかりやすく皆様にお伝えする法会であります。今までの我が人生とこれからの自己を深く見つめる機会でもあります。そして何時の日か「お念仏と法話の集い」に参加してよかったと思う日が必ずやってくると思います。
 お忙しいことと存じますが、万障繰り合わせて、この機会に勝縁なりますこの集いにご参加下さいますようおすすめいたします。

日   時
6月24日(土)11時より
会   場
大乗寺  御殿場市仁杉
講   師
大正大学専任講師 林田 康順 先生
参 加 費
1,000円
申 込 み
6月10日まで願成寺に
持 ち 物
袈裟と数珠

 

墓地清掃

 恒例となりました、お盆の墓地清掃をおこないます。檀信徒総出でのお掃除の機会でもあり、また、「そうめん流し」も用意いたしておりますので、ご家族とともにご参加いただけますようお願い申し上げます。

日時
7月2日(日) 9時より(雨天決行)

 

7月のお盆棚経

 お盆の棚経は、「ご自宅へ伺っての棚経」 と 「お寺での棚経」 とがあります。6月下旬にハガキにてご案内申しあげますので、ご希望をお知らせ下さい。

「ご自宅での棚経」
7月13,14,15日のうちお伺いする日を連絡します。
「お寺での棚経」
7月13日(木)10時、13時いずれかに本堂へ。
前日までにお電話で連絡をお願いします。

 

お盆灯籠流しの販売

 7月16日(日)、三島市仏教会主催の「灯籠流し」が水泉園(白滝公園)でおこなわれます。7月2日より、灯籠を販売いたします。

 

8月のお盆棚経

 お盆の棚経は、「ご自宅へ伺っての棚経」 と 「お寺での棚経」 とがあります。7月下旬にハガキにてご案内申しあげますので、ご希望をお知らせ下さい。

「ご自宅での棚経」
8月13,14,15日のうちお伺いする日を連絡します。
「お寺での棚経」
8月13日(日)11時、本堂へ。
前日までにお電話で連絡をお願いします。

 

 


お 願 い

 今まで、お塔婆や香花等は、寺にて焼却しておりましたが、法改定により、平成14年12月1日から「野焼き」や「簡易焼却炉」によります、すべてのごみ等の焼却ができなくなりました。現在、願成寺にあります3基の焼却炉もすべて使用禁止となり、撤去いたしました。
  したがいまして、今後、墓参の折いらなくなりましたお花などのゴミにつきましては、下記のごとく、ご処理をいたしたく存じますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


ゴミの分別

 ゴミは、次の4種類に分別してお出し下さい。

「燃えないゴミ(ビン・カン)」
市のゴミに出します
「土に返すゴミ(花・香花)」
寺にてチップにして土に返します
「土に返すゴミ(草・落ち葉)」
寺にて土に返します
「燃えるゴミ(紙・ビニール)」
市のゴミに出します

いらなくなりましたお塔婆は、寺にてチップにして土に返しますので、ゴミ箱の脇にお置き下さい。
ゴミ箱は水屋(水道)の近くに用意いたします。
飲物や食べ物は、動物が散らかしますので、お参りの後はお持ち帰り下さい。
お手数をおかけいたすことばかりでございますが、ダイオキシンをなくし、きれいな地球環境のため、切にご理解とご協力をお願い申し上げます。


 

▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
 現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
 ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。

 ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月一回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。


                           天主君山現受院願成寺住職 魚 尾 孝 久

 

  

 

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