最近、ジャガイモによる食中毒事故が2度ありました。7月19日、下野市吉田西小(武田武夫校長)で事故が発生しました。
学校農園で収穫したジャガイモを食べた児童ら29人が吐き気などを訴え、うち25人が救急車で同市内の3つの病院に運ばれた。症状は軽く、全員快方に向かっているという。県はジャガイモに含まれるソラニンなどの有毒物質による集団食中毒と断定した。
(下野新聞2006年7月21日)
20日には、江戸川区立鎌田小学校でも同様の中毒事故でした。
理科の授業で栽培したジャガイモを食べた六年生七十五人と教員二人が、芽や皮に含まれる有毒物質ソラニン類が原因の食中毒にかかったと発表した。全員が回復している。
都によると、六年生が十八日正午ごろ、四時限目の授業でジャガイモをゆでて皮ごと食べた。江戸川保健所で残りのジャガイモを調べたところ、多いもので通常の六倍のソラニン類が検出された。
ソラニンは発育不足の場合に蓄積しやすく、主に皮の内側に含まれる。
児童らが栽培したジャガイモによる食中毒は一九九八年から昨年までの八年間に全国の小学校で八件、幼稚園で一件起きている。
(東京新聞2006年7月21日)
ともに小学校での授業の一環として、児童がジャガイモを栽培し収穫したものを食べたところ、嘔吐(おうと)や下痢などの症状を訴えました。いわゆるジャガイモの芽や皮に含まれているソラニンによります、有毒物質による集団食中毒です。軽症で安心しました。
昔から、学校や地域でのカレー作りの折、ジャガイモの芽は毒なのでよく取るようにといわれたものでした。細かい事情はわかりませんが、きっと芽には十分に気をつけたのでしょうが、皮には注意が足りなかったのでしょう。
ジャガイモは収穫してから3日も光にあてておりますと、表面が緑色になってきます。いわゆる緑化がすすみ、ソラニンが増加するそうです。ある小学校では、収穫後2週間ほど教室に保存してからの調理と聞きますに、冷暗所での保存がなされなかったことが残念です。
こうしたジャガイモの特性は、次なる問題も引き起こしているのです。発芽を防止するため、日本では世界に先駆け、1974年より放射線(ガンマ線)を照射したジャガイモが販売されました。これが世界最初の照射食品です。特に、3〜4月の端境期を中心に毎年1万トン前後が出荷されているようです。放射線を照射しますことは、発芽遺伝子組みかえ作物ほど注目されませんのは、もっぱら毒を持つ芽を出させないとう利便性によるものでしょう。
ところで、植物が自然毒を有することは、そんなに不思議なことではありません。少し視点を変えてみますと、ジャガイモは人間や動物に食物を提供するために芋を作っているのではないことです。あくまでもジャガイモの子孫繁栄のために、根に養分を蓄え、翌の発芽に備えているわけです。植物の実に毒物がありますことと同じで、その芽を守りますために、他の動物に食べられないためにも、毒を有することは当然なる自己防衛ともいえるでしょう。
時を同じくして、中毒事件として注目すべき事件が報じられた。
沖縄県県南部福祉保健所は十九日、チョウセンアサガオに接ぎ木して栽培したナスを食べた本島南部に住む六十七歳の夫と六十二歳の妻が一時、記憶を失うなど食中毒症状が表れたと発表した。命に別条はない。同保健所によると、二人からは有毒物質スコポラミンとアトロピンが検出された。チョウセンアサガオを原因とする食中毒は県内初で、接ぎ木の実に毒性が転移した例は全国的にも珍しい。(中略)
接ぎ木したナスからチョウセンアサガオの毒性が検出された今回のケースは前例がなく、学術的にも注目を集めているという。
(沖縄タイムズ朝刊2006年7月20日)
朝鮮朝顔に毒があることはよく知られているが、接ぎ木によって実ったナスにまで毒が移行したことのが注目されている点です。
ところで、ジャガイモを始め、トマト、ナス、キュウリとあらゆる植物、アジやマグロのあらゆる魚が、人間に食べられるために繁殖し命を繋でいるのではないのですよね。食物連鎖の頂点に立つ我々人間は、もっともっと謙虚な心を持たねばなりませんことを痛感いたしました。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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