不二家での消費期限切れの材料の使用、賞味期限のニセ表示、さらには大腸菌が検出された場合の自主回収基準を10倍緩く設定等、消費者を裏切る一連の行為が明るみに出た。言語道断である。多分に漏れず、私も子供のころは不二家のミルキーを始め不二家のお菓子を口にすることは、何よりの楽しみであっただけに、今回の事件は残念でならない。私の子供時代の夢を壊された思いである。
田舎で生まれ育った私の着る物は、洋品屋さんで買うのではなく、年に1度であるが近所の洋裁や編み物のできる人に作っていただくことが普通であった。子供であるから毎年大きくなるので、寸法取りにそのお宅を訪ねなければならなかった。学校から帰り遊びに行こうとする時の寸法取りは、正直なところ嫌であった。
ところが寸法を取りにいくと、編み物のおばさんは、必ずお駄賃にミルキーを1箱くれるのである。それからは、寸法取りが楽しみに変わった。昭和30年頃の私には、ミルキーは何よりのご馳走であった。その頃のおやつといえばサツマイモがほとんどであっただけに、ミルキーの1箱は何もいえない喜びであった。ミルキーを食べてしまった後、箱のペコちゃんとポコちゃん切り抜いて大切にしたものである。
それだけに、子供のころに抱いて大切にしていた不二家のイメージを、根底から壊された気持ちで一杯である。
ところで、このところ新聞に「お詫び」「製品の回収」広告が激増しだした。
「ベルン(焼き菓子)のお詫びとお知らせ」(1月21日、賞味期限きれ材料使用)
「おたべ(菓子チョコ)のお詫びとお知らせ」(1月21日、賞味期限きれ材料使用)
「日東紅茶のお詫びとお知らせ」(1月23日、賞味期限なし)
「マーガリンのラーマのお詫びと回収のお願い」(1月23日、異物混入)
「スターバックスコーヒーのお詫びとお願い」(1月23日、消費期限切れ)
「ガロジャパン(ワイン)のお詫びとお知らせ」(1月24日、異物混入)
「六花亭製菓のお詫びとお願い」(1月25日、表示違反)
「オハヨー乳業のお詫びとお知らせ」(1月26日、味覚異常)
「たねや(末廣饅頭)お詫びと回収のお願い」(1月27日、賞味期限表示の誤り)
「ジェイシーシー(カステラチョコ)のお詫びとお知らせ」(1月27日、賞味期限きれ材料使用)
「レーマン(チョコ製品)のお詫びとお知らせ」(1月27日、賞味期限きれ材料使用)
「新宿高野(ジャム)のお詫びとお知らせ」(1月27日、賞味期限無表示)
不二家の事件から、それぞれの会社が一斉に内部調査に入ったのであろう。今は自社の不始末を隠ぺいするのではなく、自ら公表することこそ得策と考えたように思われてならない。今回は食品業界を取り上げたが、製造業を中心に品質表示等のお詫びとお知らせも多い。会社というものは、こんなにも嘘で塗りたくられているのであろうか。雪印の事件での反省は、どこへ行ってしまったのであろうか。
ところで、私ども寺院をはじめ、宗教関係者はどうであろうか。一般の会社は物品や技術を提供しているだけに形がわかりやすいが、宗教というのは形がないだけに難しところがある。気がつかないところで、不二家と同じような過ちを犯していないかと不安になる。いろいろ考えさせられる事件である。
<消費期限> 決められた方法で保存した場合に、腐敗などで安全性を欠く恐れはないと認められるのが消費期限。おいしく食べられる限度を指す賞味期限と違う。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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