8月と言いますと、日本では「お盆」そして「盆踊り」が年中行事となっていますが、じつはハワイでも夏はお盆の行事をつとめています。両親が守っておりますお寺、ラハイナ浄土院でも、毎年7月の第1土曜日に盆踊りをおこなっています。マウイには日本の仏教寺院が10ヶ寺以上あり(浄土宗が3ヶ寺あり、その他に本願寺が4ヶ寺、真言宗が3ヶ寺、と臨済宗、曹洞宗、、日蓮宗が各1ヶ寺)、各寺では毎週末に盆踊りをおこなっています。6月末から8月末まで毎週どこかのお寺で、年齢や人種を問わず大勢の人々がワイワイと賑やかに集まって、盆踊りが営まれているのです。
日本の伝統を引き継いだ日系人の方が、この習慣を守り続けてきました。日本から初めて移民としてハワイに来た1世の方々はすでに亡くなり、お寺の檀家さんたちは2世、それも殆ど80代のおじいちゃん、おばあちゃんになってしまいましたが、皆が頑張ってお寺を守っています。さらにその方々の子供、孫、曾孫たちまで家族でこの伝統を受けついているのです。ハワイの現状は、年々日系人の人口が減っていく一方ですが、久しぶりにラハイナのお盆に帰ってみると、アメリカ本土や他の島々に住んでいる子供や孫たちが盆踊りのお手伝いに戻ってきていました。皆が頑張って協力し合う姿に、ほんとうに心が打たれました。
ハワイに移民した日本人は、故郷から離れ、なかには家族からも離れながらも、家や家族を大切に思い、祖先を祭ってきました。彼らはサトウキビやパイナップルの畑や工場で働き、大変厳しい肉体労働を強いられてきました。百年前の移民1世の日系人は、お金もなく、知る人もなく、暑い土地ハワイに出稼ぎにきたのです。。美味しい食べ物も、教育も、豊かな暮らしも今は当たり前になっている我々には、想像しがたい世界で苦労をしてきたと思われます。
あるおじいちゃんは16歳で父とハワイに船で来た、あるおばあちゃんは14歳で会ったこともない人の花嫁さんになるために来ました。今は自然に溢れたハワイという素敵なイメージをお持ちでしょうが、昔の人にすれば無人島に流されたような気持ちではなかったしょうか。ハワイの日系人は本当に苦労してきましたが、皆ニコニコといい顔してお寺のために勤めてきたのです。彼らの温かい感謝の心は、本当に素晴らしいものです。
ハワイのお盆は、日本と違って移民の人々のお祭りです。また日本各地から移民してきましたので、盆踊りの曲は、それぞれの故郷を全部取り込んでいきます。同じ曲が2度と踊ることがないくらい数多くの曲が、一晩中歌われ踊られるのです。「福島音頭」や「東京音頭」さらには「炭坑節」まで、日本各地の民謡が飛び出してきます(1ヶ月前から地元の人たちは練習までしています)。そして、盆踊りには、日系の方や仏教信徒だけではなく、様々な人種の人々、異なった宗教や考えを持つ人々も参加しています。
お盆という時期は、先祖そして亡き人を偲ぶ一時であります。故郷から遠く離れてしまった移民の方々は、この一時をとても大切にしてきました。お盆は、決して過去の風習ではなく、ハワイもまた日本と同じように家族が集まり、昔のことを思い出したり、そして先祖を感謝し、今をありがたく楽しく生きていくことがお盆だと思います。お盆こそ、お互いを思いやり、心から有難うと感謝の気持ちを分かち合う一時ではないでしょうか。
原 真 理
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