三月といいますと、博物館の春の特別展の準備や確定申告の時期で忙しく感じます。しかし、少しづつ暖かくなり、季節として元気な気分になる時期でもあります。春はやはり様々な面でわくわくと期待感をもちます。また、お正月と違いまして、気持ちが新たに切り替えるときだと思います。常夏のハワイで生まれ育った私にしては、はやり冬から春という時期は奇跡のようです。自然のなかでは、新しい植物が生えてきたり、冬の間静かにしていた鳥の鳴き声が聞こえてきたり、山の雪が溶けて川の水として流れたり、様々な自然現象がおきます。
そのためか、人の気持ちも同じで、芽生えたように色々な新しい発見をします。ものごとを新たな視点から見るようにもなります。(勿論、この季節は良いことばかりではありません。知り合いの間では花粉症に悩まされたり、うつ病になる人もいます。でも、大多数の方は四季の中で、春は格別な時期だと思う人は多いと思います。)
私は、この春のいろいろな新しい発見や出会いを楽しみにしています。ひとつは、先月、40歳になったことです。ある人生のターニング・ポイント(turning
point, 転換期)として、20代や30代とまた違う視点から世界を見るようになったと感じます。人生経験や仕事の面で、とても面白いというか楽しいときだと思います。また最近は、親にいわれてきたことを初めて理解できるようになったと感じます。これは親が子育てをしていた歳に、自分も到達したからでしょうか?あるアメリカ人の先輩にこう云われました、「40
is the new 20」(40歳は新しい20歳)。彼女が言っているのは、今はもはや40歳は若いのですよということです。勿論、体は20代とは違いますが、やはり気持ちを若々しくすることが大切なのかも知れません。
あとひとつは、仏教大学で開教師(海外のお寺で活躍する浄土宗の僧侶)のための英語を教えないかと声がかかり、普段一人で翻訳者として缶詰状態で仕事している私が、4月からまた学生の前に立つことになりました。教壇に立つのは2年ぶりなので、この新学期、学生だけでなく私も緊張を感じます。
最後に、今年からエンゲージド・ブディズム (Engaged Buddhism) という勉強会に知り合いから誘われ、参加させていただいています。この会では様々な仏教のテーマの本や記事を読書して、それについて論じます。大学院生、学者、と私のように仏教に関心持つ人が十数人、宗派問わず参加している勉強会です。「エンゲージド」という言葉は、辞書では、様々な意味合いを持っています。「婚約」という意味も持ちますが、この場合、「積極的に関与、参加する」という意味です。したがって、エンゲージド・ブディズムというのは、「社会的に関わる仏教」と解釈します。ここでは、社会の中でどのように仏教が活躍しているかと考えさせていただいています。もともと、このコンセプトはベトナムで反戦運動をした僧侶などに関して使われましたので、日本だけではなく、大きな社会を指します。
春は、いろいろな新しい始まりの季節でありますが、改めてチャレンジすることを見直す素晴らしいチャンスだと思います。この春はどのような新しい出発点を楽しみにしますか?
原 真 理
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