願成寺ホームページは、 こちら(http://ganjoji.com/)です。

次回配信日は、6月2日です。



4月の増上寺全景


唐門

 住職を拝命して二十数年、お檀家さんにとって身近な住職となることを心がけて参りました。いろいろな法要や催し物を通してお話しできる機会は無論のこと、定期的にお年寄りと食事会をもうけ、語らいの場を増やしてまいりました。
 お陰さまで、みなさんがいろいろな質問をしてくるのですが、なかなか難しいことを問うて参ります。あるご婦人、八十歳に近いでしょうか。
「ご住職さん、わたしは戦争で主人を亡くし苦労しましたが、無事子供を育てあげ、今は何の心配事もありません。ただひとつだけ気がかりなことがあるのです。主人は三十歳で戦死いたし、とても美男子でした。わたしがあの世にいったとき、三十歳のままの主人が、こんな年老いた私に気がつくでしょうか。仮に判ってくれたとしても、こんなしわくちゃのおばあさんを迎えてくれるでしょうか。」ご本人には重要な問題なのです。
 またある婦人は、「わたしはいつ死んでもいいのですが、あの世にいってもつまらないのです。」という。「どうしてですか。」と尋ねますと、また難しい問題をいうのです。
「ご住職さんもご承知のように、後添えとして嫁いで参りました。すでにご浄土に旅立った主人は、三十四歳でなくなった最初の奥さんと仲良くしているでしょう。そんなところに年取ったわたしが行っても歓迎されるはずがありません。だから死んでもつまらないのです。」と訴えます。
 うちのお檀家さんはみんな良い人たちなのですが、住職泣かせの質問をしてまいります。いい加減な返事はできません。
「仏さまの世界は、若いとか年寄りとかいうことは関係のない世界なのですよ。」
「前の奥さん後の奥さんということも、関係のないところなのですよ」と答えますが、まだ得心をいただけないようです。
「ご主人は、仏の世界から長い間あなたを見守っていて下さったのですよ。」、「前の奥さまも、あなたのことを応援して下さっているのですよ。」と、阿弥陀さまそして先にご浄土に参られた方が、私どもをご回向して下さっておられることをお話ししました。
 そして、人間の世界の感情で、仏さまのことを考えてはいけないことを申し添えました。愛すべきお檀家さんたちである。
(大本山増上寺機関誌「三縁」平成20年4月に掲載)

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


(前話は、願成寺ホームページ「メルマガお申し込み」のバックナンバーにあります。)

第3巻「空蝉」その3「囲碁する女」

 もうひとりの女は、東向きで残るところなく見える。白い薄物の単衣襲、二藍(ふたあい)の小袿のようなものを無造作に着て、紅の袴の紐を結んでいるあたりまで胸をあらわにしているようすである。たいそう色白で美しげに太った大柄の人で、頭や額はあざやかで、目や口つきはたいそう愛敬があり、はなやかな容貌である。髪はたいそうふさやかで、長くはないが下がった先や肩のようすなと清げで、総じてたいそうひねくれたところがなく、美しいげなる人と見えた。
 なるほど親が自慢するのも無理もないと、おもしろくご覧になる。いま少し落ち着いた感じが加わったならばと、ふと思われる。才能がないわけではあるまい。

 碁が打ち終わって駄目をつめるあたり、機敏にみえてテキパキとするが、奥の人はたいそう静かに落ち着いていて、

「お待ちなさい。そこは地でしょう、このあたりの劫を」というけれど、

「いや、このたびは負けました。隅のところ、どれどれ」と、指を折りながら、

「十、二十、三十、四十」など数えるようすは、伊予の湯桁もたどたどしくなく数えられるであろう。少し品がない。

 たとえようもなく口元を袖でわずかでも顔を見せないでいるが、しっかりと見詰めると、しぜんに横顔がみえる。目がすこし腫れた感じで、鼻などもあざやかなところもなく年取った感じで、美しくもみえない。はっきりいうと、わるき器量であるが、たいそうきちんとしているので、この器量のよい人よりも心あると目がとまるようすである。


ひとえ‐がさね【単襲】‥ヘ‥
単二領以上を重ねる着装法。夏季用。(広辞苑)

ふた‐あい【二藍】(2種の藍の意)
@紅くれないと藍とで染めた色。やや赤みのある藍色。「ふたゐ」とも。
A襲かさねの色目。山科流では、表裏ともに二藍または裏白。(広辞苑)

こ‐うちき【小袿】
女房装束の略装で、上級公家女性が用いるややかしこまった上着。身丈が袿より短い。表は二倍ふたえ織物または浮織物、裏は平絹または綾など。(広辞苑)

だ‐め【駄目】
囲碁で、双方の境にあって、どちらの地にもならない空所。偐(にせ)紫田舎源氏「碁を打ち果てて、此所は―そこにも二目と言ふさへも」(広辞苑)

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


青表紙本源氏物語「空蝉」(新典社刊)


「空蝉」本文


囲碁をする女たち(京都風俗博物館より)


 

大施餓鬼会のお知らせ

 本年もお施餓鬼会法要を、下記のごとく厳修いたしたくご案内申しあげます。ご先祖の供養とともに、一日ではありますが、みほとけの教えにふれます良い機会ともいたしたく存じますので、お誘いのうえお申し込み下さい(当日ご参加できません方には、当寺にてお塔婆をお墓に立てさせていただきます)。

日   時
5月15日(木)  【13時】法要、 【14時】奉納ピアノ演奏
演   奏
瀬川  玄
未定
供 養 料
3,000円
申 込 み
お参りの折、電話、FAX、E-mail(前日までに)

 

第264回 辻説法の会

 お茶を飲みながら、法話をお聴きになりませんか!

日   時
5月16日(金) PM7:00〜8:30
会   場
茶房「 欅(けやき) 」 2F TEL:055-971-5591
講   師
慶昌院 磯田 浩一 師
参 加 費
無料
主   催
県東部青少年教化協議会(この会は、特定の宗派にこだわらず、
ひとりでも多くの方々に仏教を伝えることを目的に活動する団体です。)
次   回
6月20日(金) 同時刻  福泉寺 岩佐 善公 師

 

 


お 願 い

 今まで、お塔婆や香花等は、寺にて焼却しておりましたが、法改定により、平成14年12月1日から「野焼き」や「簡易焼却炉」によります、すべてのごみ等の焼却ができなくなりました。現在、願成寺にあります3基の焼却炉もすべて使用禁止となり、撤去いたしました。
  したがいまして、今後、墓参の折いらなくなりましたお花などのゴミにつきましては、下記のごとく、ご処理をいたしたく存じますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


ゴミの分別

 ゴミは、次の4種類に分別してお出し下さい。

「燃えないゴミ(ビン・カン)」
市のゴミに出します
「土に返すゴミ(花・香花)」
寺にてチップにして土に返します
「土に返すゴミ(草・落ち葉)」
寺にて土に返します
「燃えるゴミ(紙・ビニール)」
市のゴミに出します

いらなくなりましたお塔婆は、寺にてチップにして土に返しますので、ゴミ箱の脇にお置き下さい。
ゴミ箱は水屋(水道)の近くに用意いたします。
飲物や食べ物は、動物が散らかしますので、お参りの後はお持ち帰り下さい。
お手数をおかけいたすことばかりでございますが、ダイオキシンをなくし、きれいな地球環境のため、切にご理解とご協力をお願い申し上げます。


 

▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
 現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
 ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。

 ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


 

本メールマガジンがご不要な方は、下記URLから配信を解除できます。

http://ganjoji.com/mlmaga.html (解除・退会)