拙寺では、お盆を4回おこなう。いわゆる旧盆(8月13日〜15日)と、旧暦をそのまま新暦にした7月盆が一般的である。ところがお地蔵さんの日の24日を中心とする地蔵盆、7月31日〜8月2日かけての晦日盆(みそかぼん)あるいは朔日盆(ついたちぼん)である。お盆の期間は3日間であるので、のべ12日間がお盆ということになり、夏休みは半分がお盆といえよう。
お盆の行事は、いわゆる「盂蘭盆経」に由来するが、仏教伝来のなかで、各国各地の民間信仰を吸収して、今日の形式になったのであろう。したがってお盆の迎え方も、日本各地で多少違いがあるようである。
やはり、ご先祖さまが我が家に帰ってくるので、迎え火を焚き、たくさんのご馳走をお供えして、3日間お祀りするのが基本である。そしてお盆があけると、送り火を焚きお送り申す。送り火、灯籠流し、大文字焼き等がこれにあたる。以前、大文字の大きさを競う大文字焼きを批判したことがあるが、本来の主旨と違うからである。
ご先祖さまがご自宅に帰ってこられると、私ども僧侶が各お檀家さんを訪ねご供養申しあげるのが棚経である。
ひと昔までは、お盆のあいだ3日間、いつ訪ねても迎えてくれたが、昨今何日の何時頃ですかという問い合わせが多くなっている。拙寺では棚経は3日間にご供養にうかがうため、6人のお坊さんで対応しているが、お訪ねする日、訪ねるお坊さん、地域を割り振るには、パソコンが必要になるほどである。昔は3日のあいだであれば、いつ伺っても問題がなかったのであるが、忙しい現代はそうはいかない。
ところで、江戸時代から職人や商家での休日で実家に帰れるのは、「藪入り」といってお盆とお正月の2回だけでした。
近在の農家では、お盆までに田植え後の草取りを終えすべての農作業が一段落するときがお盆である。お蚕さんを飼っているとか、農作業の区切りに違いがあるため、地域によってお盆の時期が違ったのであろう。したがってお盆は、お盆休暇(おぼんやすみ)といい、3日のあいだ親族も集まっての慰労の時でした(地方によっては湯治にでるところも)。ですからお盆中に田や畑にでることは、農作業がかたづいていないということで、とても恥ずかしいことでした。
専業農家が兼業農家になり、さらに自宅で消費する米や野菜を作る農家となると、お盆休暇をしなくなりました。時代の変化といえばしかたないが、一抹の寂しさを禁じ得ません。
でも、こころよく迎えて下さり、ともにご先祖のご供養申しあげますことは、快いものがあります。
うらぼん【盂蘭盆】
(梵語ullambana 倒懸と訳され、逆さ吊りの苦しみの意とされるが、イランの語系で霊魂の意のurvanとする説もある)
盂蘭盆経の目連(もくれん)説話に基づき、祖霊を死後の苦しみの世界から救済するための仏事。陰暦7月13日〜15日を中心に行われ、種々の供物を祖先の霊・新仏・無縁仏(餓鬼仏)に供えて冥福を祈る。一般には墓参・霊祭(たままつり)を行い、僧侶が棚経(たなぎよう)にまわる。地方により新暦7月・8月など日が異なる。盆。うらんぼん。盂蘭盆会うらぼんえ。精霊会しようりようえ。(広辞苑)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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