携帯型ゲーム機の本格的普及は、任天堂が1989年に発売したゲームボーイに始まるといってよい。子供たちが外で遊ばなくなり、ゲーム機を持っていないと友だちができないとか、時にはゲーム機のための犯罪もおこり、社会問題にもなった。
2000年には総生産台数が1億台を突破して、世界70カ国で楽しまれているという。
現在では2004年に登場した「ニンテンドーDS」、2006年には上位機種「ニンテンドーDS
Lite」が発売されている。据え置き型ゲーム機として2006年には「Wiiウィー」も登場して、テレビコマーシャルも盛んにおこなわれている。
携帯用であれ、据え置き型であれ、今までのゲーム機と大きく違うことは、対象年齢が子供だけではなく、成人からお年寄りまでをターゲットとしていることである。
DSでは東北大学の川島隆太教授監修による『脳を鍛える大人のDSトレーニング』、俗に「脳トレ」と呼ばれる脳活性化ソフトの発売である。今まで一般ゲームが中心であったソフトが、つぎつぎと新しい分野のソフトが発売され、「脳トレ」は惚け防止であろうか、中年相の特に女性に人気があるようにも思う。DSは英単語や漢字検定など、今では学校教育にも取り入れられている。
Wiiは、コマンドが無線化されコードがなくなることによって、自由に振り回すことができるようになり、体を動かしての「テニス」「ベースボール」「ゴルフ」「ボーリング」「ボクシング」が可能となった。こうなると子供ばかりでなく、中年おじさんも参加してくる。
またバランスボードの登場により、重心バランス、BMI(身長と体重の比率から換算される肥満度)の算出、バランス年齢の判定ができ、さらには「バランスゲーム」「有酸素運動」「ヨガ」「筋トレ」と40種以上のトレーニングができ、フィットネスマシーンとして楽しめるのである。
このお正月にまさしく老若男女20人ほどでの新年会の折、Wiiフィトを楽しんだ。いつもならば子供たちはゲーム機、大人はお酒となるのであるが、子供たちがWiiでホームラン競争をおこなうと、おじさんたちも赤い顔をしながら、野球ならば負けはしないとコントローラを振り回す。スキージャンプはバランスボードにのってテレビの画面を見ながら踏切のタイミングをとるだけであるので、だれでもできる。
ゲーム機業界は、年々少なくなっていく子供たちを対象にしていたのでは将来のないことから、大人を対象とした商品の開発が続いているのである。私もその戦略に乗せられてしまったのであるが、お酒ばかりの新年会とは違って、子供たちや若い人たちとのお正月は新鮮なものであった。
私も早速DSをもとめ、利用している。財団法人日本漢字能力検定協会公式DSソフト「漢検」である。最近パソコンを使うためか、漢字が書けないことがあると、DSを始めた。ちょっとした時間に、電車に乗っているとき、待ち時間、寝る前にと漢字勉強?に励んでいる。
先日新幹線のなかでの出来事である。若い女性が英単語を、私が漢検をしていると、初老の男性が、奥さんに話をしている。「いい大人が電車のなかまでゲームをしている」と不快感を露わにしている。
無論、音が出ているわけでもなく他人に迷惑をかけているとは思わないので、公共の場で漢字の勉強をするつもりである。
パソコンを使うようになって漢字が書けなくなったのではなく、単にもとから覚えていない漢字は書けないこともわかった次第である。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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