ある学会の懇親会で、「寺社縁起」か「社寺縁起」かが話題となった。いわゆる「寺」が先か「社」が先かと、ふたつの語を並べたときの語順のことである。「男女」「左右」「犬猫」「東西」とあるとき、先の語のがインパクトがあるという。たしかに「日本」と「中国」と並べるとき、自国を先にする。日本では「日中親善」,中国では「中日親善」となる。また「左右」は、はっきりと「左」の優位性を認めざるを得ない。右大臣より左大臣のが上位であることは明解なことである。
そこで問題となるのが「男女」や「犬猫」等の言葉である。「男女」は、男尊女卑などの歴史的な背景を除けば、現在は完全な並列であり男と女は平等である。だが、どちらかを先に書かなければならない。
つぎに「犬猫」であるが、これもなかには「猫犬」を主張する人たちがいる。まず目安となるのが病院であるので、犬猫病院を調べてみるに、東京都にはおおよそ1000軒ちかい動物病院があり、そのおおかたが「○×動物病院」とある。「犬猫病院」と名乗る病院はその1割もないことがわかった。そして「猫」が先となる「猫犬病院」と名乗る病院はないようである。なお、「猫病院」は数件みられるが、「犬病院」は見あたらないなど興味深いが、今回の問題と外れる。
朝日新聞「(be between)ペットに子どもと同じ愛情注ぐ」(200.11.8)によると、全国で飼われている犬や猫は2000万匹以上、beモニター8000人(※)によると、
■犬好きですか?猫好きですか?
(回答者数:3469人)
犬好き 44%
猫好き 16
どちらでもない 40
■「犬好き」の人が答えました その理由は?
(三つまで選択)
素直で従順 1,005人
よくなつく 951
喜怒哀楽がわかりやすい 526
姿形が好き 426
散歩が楽しい 299
防犯に役立つ 291
その他 61
■「猫好き」の人が答えました その理由は?
(三つまで選択)
マイペースさ 344人
しぐさ 312
姿形が好き 247
人間にこびない 186
散歩の手間がない 106
世話が楽 105
その他 43
「犬好き」は素直で従順であること、「猫好き」はマイペースであるところに惹かれるようだ。犬派の圧倒的な数値からは、まだしばらくは「犬猫」でよいのであろうか。
以前から我が家の警備犬の話を書いてきたように、私は犬派であるが、先日すばらしい猫に出会った。
京都天竜寺を参拝し、嵯峨に抜ける道を歩いた。天竜寺裏門を出たところに、御髪神社(みかみじんじゃ)という小さな社があった。そろそろ還暦を迎えようというわれわれは、とたんに手が髪に行き、いつもより心なしか真剣に手を合わせた。神官の方と話をしていると、2匹の猫が神官に向かってしきりに鳴いている。「もう、仕事を終わりにして、ご飯にしてよ」と鳴いているのだという。
神主さんの眼が、途端に我が子を見る眼になっていた。
(※)<beモニター> 朝日新聞アスパラクラブ会員の8000人が登録。毎週、アンケートに協力をいただいている。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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