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次回配信日は、1月5日です。



息子が奉納したお狐さん


みそ汁の具

 境内にお岩稲荷が祀られている。お稲荷さんは、倉稲魂神(うかのみたまのかみ)を祭神としてまつり、農耕神としての信仰がその中心であったが、時代とともに商業神や屋敷神として各地に稲荷社が勧請され広まっていったという。きっとお岩稲荷も、稲荷信仰のこうした広まりのなかで、悲劇の主人公が祭神となっていったのであろう。
 鶴屋南北の「四谷怪談」にあるように、貞女であったお岩が夫伊右衛門に惨殺され、幽霊となって復讐するというところから、浮気封じの神さまとして祀られている。俗に人目につかないようにお参りをしなければならないとかいわれ、早朝や、夜中のお参りがなされた。

 戦後まもなくのことである。祖母は朝早く身支度をそろえると、お稲荷さんにお参りに行く。決して住職が浮気をしていたのではなく、時としてお稲荷さんに供えられていた油揚をいただいてくることにある。その日は、揚げのはいった美味しい味噌汁となるわけである。
 拙寺は檀家寺であるので、基本的にはお檀家さん以外のお参りはほとんどないが、お稲荷さんは別である。昭和30年代の前半のころのであろうか、お稲荷さんの朝参りした祖母が息を切らして戻ってきた。何とお賽銭箱に10万円入っていたのである。その当時の10万円は大金であるが、無論だれが上げたのかは判らない。きっと、夫の浮気が治ったご婦人のお礼であろうか、そのお金はありがたく頂戴いたし、姉の進学資金になったという。
 お賽銭としては、まだこの記録は破られていない。

 お岩稲荷さんをまつる稲荷社の総本宮とされる伏見稲荷大社には、ときどきお参りをすることがある。時にはお檀家さんをともなっての参拝後には、参道周辺での焼き鳥屋さんにはいって一杯となる。いわゆる農作物を荒らす雀の焼き鳥であり、雀退治とあい成るわけである。
 家族旅行も寺社のお参りは欠かさない。伏見稲荷大社にお参りしたとき、息子といっしょに「お狐さん」をもとめてきた。小学生になったばかりの息子には、ぬいぐるみと大して変わらなかったようである。
 妻はあまり関心がないようで、家内安全である。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


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第4巻「夕顔」その1

 六条あたりのお忍び歩きのころ、内裏より退出になられる中宿に、大弐の乳母のたいそう患って尼になった方を見舞うと、五条のその家をお訪ねになられた。
 お車の入る門には鍵がかかっていたので、人をして惟光をお召しになって、お待ちになられるほどに、騒がしげである大路のようすを見わたしになられる。この家のかたわらに、檜垣というものを新しくして、上の方は半蔀を四・五間ばかり上げてあって、簾(すだれ)などもたいそう白く涼しげにしてあるところに、美しげな顔の透き影が何人か覗き見をしている。立って動いているような下を思いやると、とくに丈が高い心地がする。どのような者の集まっているのであろうかと、不思議にお思いになる。

 お車もたいそうやつしになられて、前駆(さき)もお付けにならないので、誰ともわからないと気をお遣いにならず、少しお覗きになられると、門には蔀(しとみ)のようなものを押しあげてあり、奥行きもなくものはかない住まいを、あわれに「ついの住み家とはこのようなものである」と思えば、御殿も同じであると思う。

 切懸(きりかけ)のような物に、たいそう青々とした葛(かづら)が心地よげに絡まっている所に、白い花が自分だけはと笑みの眉をひろげているように咲いている。
「そちらの人にものを申します」と独り言をおっしゃるのを、み随身が膝をついて「あの白く咲いている花は、夕顔と申します。花の名は人のようで、このような垣根に咲いております。」と申す。

 本当にたいそう小さな家ばかりで、粗末なあたりのあちらこちら傾いて、立派ではない軒先に絡まっているのを、「口惜しい花の運命であるな、一房折ってまいれ。」とおっしゃると、この押しあげてある門にはいって折る。
 さすがにしゃれた引き戸の口に、黄色の生絹のひとえ袴を長く着ている女童のかわいらしいのが出てきて手招きをする。
 白い扇のたいそう香をたきこんであるのを、「これに置いてさしあげなさいませ。枝もなさけない花でございますので。」と、わたすと、門を開けて惟光朝臣が出てきて、さしあげる。

 「鍵を置き忘れてしまいまして,たいそう困ったことでございます。物の道理も分かる者もおりませんが、混んだ大路にお立ちさせてしまいまして。」
と、かしこまって申す。

なか‐やどり【中宿り】
途中でやどること。途中のやどり。また、その宿。源氏物語夕顔「内裏うちよりまかで給ふ―に」

め‐の‐と【乳母】
@生母にかわってその子に乳を飲ませ、育てる女。うば。ちおも。ちのひと。枕草子25「ちごの―の」
A
(「傅」と書く) 保育の役をする男性。もりやく。ふ。平家物語11「御―持明院の宰相も」

ぜん‐く【前駆】
(古くはゼング・セングとも) 騎馬で先導すること。また、その人。さきのり。さきがけ。先駆。平家物語1「―せんぐ御随身みずいじんどもがもとどりきつて」


すずし【生絹】
生糸きいとの織物で、練っていないもの。軽く薄くて紗しやに似る。源氏物語空蝉「―なるひとへ」。日葡辞書「ススシ」、練絹ねりぎぬ

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


青表紙本源氏物語「夕顔」(新典社刊)


「夕顔」本文


 

第271回 辻説法の会

 お茶を飲みながら、法話をお聴きになりませんか!

日   時
12月19日(金) PM7:00〜8:30
会   場
茶房「 欅(けやき) 」 2F TEL:055-971-5591
講   師
大泉寺副住職 小島 健布 師
参 加 費
無料 (飲み物は各自でお支払いください)
主   催
県東部青少年教化協議会(この会は、特定の宗派にこだわらず、
ひとりでも多くの方々に仏教を伝えることを目的に活動する団体です。)
次   回
1月16日(金) 同時刻  善教寺住職 土山 和雅 師

 

修正会(新年会)の中止のお知らせ

 恒例の新年の初参り、新年会は、書院庫裡建設準備のため、平成21年は 中止とさせていただきます。

 

 


お 願 い

 今まで、お塔婆や香花等は、寺にて焼却しておりましたが、法改定により、平成14年12月1日から「野焼き」や「簡易焼却炉」によります、すべてのごみ等の焼却ができなくなりました。現在、願成寺にあります3基の焼却炉もすべて使用禁止となり、撤去いたしました。
  したがいまして、今後、墓参の折いらなくなりましたお花などのゴミにつきましては、下記のごとく、ご処理をいたしたく存じますので、ご理解とご協力をお願い申し上げます。


ゴミの分別

 ゴミは、次の4種類に分別してお出し下さい。

「燃えないゴミ(ビン・カン)」
市のゴミに出します
「土に返すゴミ(花・香花)」
寺にてチップにして土に返します
「土に返すゴミ(草・落ち葉)」
寺にて土に返します
「燃えるゴミ(紙・ビニール)」
市のゴミに出します

いらなくなりましたお塔婆は、寺にてチップにして土に返しますので、ゴミ箱の脇にお置き下さい。
ゴミ箱は水屋(水道)の近くに用意いたします。
飲物や食べ物は、動物が散らかしますので、お参りの後はお持ち帰り下さい。
お手数をおかけいたすことばかりでございますが、ダイオキシンをなくし、きれいな地球環境のため、切にご理解とご協力をお願い申し上げます。


 

▼ 文学講座のお誘い
 願成寺公開文学講座といたしまして、『源氏物語』を読んでおります。写本(青表紙本、新典社刊)と活字本とを対校しての講読ですが、参加者全員で声を出しての読みますので初心者の方でもご自由に参加いただけます。
 現在、「須磨」の巻に入ったところで、朧月夜との事件から都に居られなくなった光源氏が、須磨へと旅立つところです。
 ご一緒に、光源氏とともに須磨への旅を始めましょう。

開催日
 毎月 第1,3土曜日(変更あり)
開催時間
 10時〜11時30分
場所
 願成寺庫裡
費用
 無料(教科書はお求めいただきます。 1000円〜2000円)
申し込み
 電話、FAX、E-mail

※ご参加をご希望の方は、檀家、非檀家を問わず、どなたでもご参加いただけます。

 ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

 教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

 寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

 インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

 毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

 諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

 天主君山現受院願成寺住職
 魚 尾 孝 久


 

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