1月20日、アメリカは世界にも影響をあたえる新しい時代を迎えました。
新しい大統領オバマさんの就任がおこなわれ、その就任式は世界中の人々が見て感動しました。
現在、サンフランシスコに来ている私も市役所前で、就任式を見て友達と喜びの涙を流し、朝からシャンパンで祝いました。だが、街はどんちゃん騒ぎではなく、祝いの中でも、これからの様々な問題の重さを感じました。大統領になったオバマさんは、着々とこれらの問題解決に挑戦しています。「Yes,
we can.」と言う宣言で、前向きに進んでいます。
アメリカは、「前向き」のイメージが強いです。ですが、今回、アメリカに戻って思ったことは、前向きでありながら、歴史が短いためか、多くのアメリカ人はアイデンティティを探しています。アメリカ人だけでなく、グローバル化している世界で、「アイデンティティとは何か?」という質問は様々な形で、様々なところで問われています。
歴史が長い国は、また違う形で、この問題を扱っています。「私は誰なのか?」そして、「どのように、社会や世の中と繋がっているか?」と言う質問は、たぶん誰でもが一回は考えたことがあると思います。
私は、ハワイで生まれ、日本人の親にハワイで育てられました。家では日本語、外では英語の世界でした。時々、学校で教えられたことと親が言うことが矛盾し、アメリカ人でありながら、日本人の親の考え方に強く影響された私は、アイデンティティのことをよく考えることになりました。
子供のころ、アメリカは何でも新しいもの、大胆なものが一番というイメージが強かったのです。親は、逆に、古いもの、先祖、小さなものを大切にすることを教えてくれました。学校では、個人主義で、自分のことを大切にすることを強調し、家では、人さまのことを大事にすることを教えられました。この二つの世界のバランスをとることに頑張って来ました。ですが、今回思ったことは、アメリカ人も段々自己中心や前向きばかりではなく、周りや過去のことを見ることになってきました。自分のお祖父さんやお祖母さんや、先祖がどのような人たちであったかと考えている人に何人か会いました。これは、やはり自分が誰かと言う質問に繋がっているといえましょう。
前向きになることは、もちろん素晴らしいことですが、自分と言うものは過去(祖先)があるからこそ、今があり、これからを築いていけます。法然さまのお念仏の教えは、この関係を大切にすることを教えています。自分一人が生きているのではなく、阿弥陀さま、ご先祖さま、そしてすべて繋がっているものに生かされているのです。
先祖が築いてくださった伝統や歴史は、古いから今の世の中には不要や関係ないのではないと思います。これを見直すことやこれらから学ぶ大切なものを忘れてはいけないのではないでしょうか?もちろん、日本はとても国として、文化財などを大切にしています。だが、ものばかりではなく、そのものの意味や人をもっと大切にすることが大事だと思います。
今回、大統領就任式で改めて思わされたことは、前向きでいながら、自分がどこから来て、どのようにそこまで着いたかと考えることの大切さです。オバマさんも、自伝に親や祖父母のことを語り、そして演説にはこれまでの数々の人のお話をしていますが、やはりアイデンティティと言うものは一人で築いていくものではないです。すべてに繋がっていながら、新しく前に進んでいくことが大切ではないでしょうか?
(写真提供:Kristin Tieche)
原 真 理
|