2年ほど前である、お彼岸になろうとしているとき、突然にガマガエルが出現した。十数年ぶりの3度目のお出ましであった。ちょうど法然上人800年遠忌に向けて、書院庫裡の建設にともない、寄付をお願いしているときであっただけに、おごることなく精進をしていく事を誓った次第である。
そしてこの7月のお盆に4度目のお出ましである。早速携帯のカメラに収まっていただいた。書院庫裡の建設の完成があと2ヶ月というところでの出現となり、まさしく出来具合を見に来たのであろうか。
蛙とはいえ、「山主」であられる。今回は息子もいたので、「副住職でございます」と会っていただく。快い緊張感が走る。
どうも節目ごとにお出ましになられるように思われるのは、何故だろうか。違った見方をすれば、単に偶然出会ったに過ぎないのかもしれない。むしろ、大がかりな基礎工事をおこなっただけに、自然環境への影響を考えたとき、ヒキガエルの出現は何か安堵感を受けた。
それは、ただ滅多に見ることのなくなったヒキガエルに出会ったことに、特別の意味を持たせようとしていると言ってもいいだろう。たとえ偶然であっても、その出会いというものを大切にしたいと思う。
人間にしても、動物にしても我々は多くの出会いのなかで成り立っている。出会いを喜ぶこともあるし、時には望まない出会いもないわけではない。すばらしい出会いは、素直に喜べばよいのであるが、いやな出会いには、時には耐え、時には忍ばなければならないこともあるであろう。
私が寺に生まれて、寺を務めることも、ひとつの出会いである。その出会いを受け入れるも、受け入れないことも、本人の自由であることは言うまでもないことである。ただ多くの出会いのなかで、そのひとつひとつを精査することはなかなか出来ないことであるとするならば、出会いというものを大切にしていきたい。
山主さまに会ったことによって、無事な書院の完成、そして法然上人800年遠忌の法要が無事迎えることができるように思えてきた。
さん‐しゅ【山主】
一山・一寺の住持。
ひき‐がえる【蟇・蟾蜍】 ‥ガヘル
カエルの一種。体は肥大し、四肢は短い。背面は黄褐色または黒褐色、腹面は灰白色で、黒色の雲状紋が多い。皮膚、特に背面には多数の疣(いぼ)がある。また大きな耳腺をもち、白い有毒粘液を分泌。動作は鈍く、夜出て、舌で昆虫を捕食。冬は土中で冬眠し、早春現れて、池や溝に寒天質で細長い紐状の卵塊を産み、再び土中に入って春眠、初夏に再び出てくる。日本各地に分布。ヒキ。ガマ。ガマガエル。イボガエル。色葉字類抄「蟾蜍、ヒキカヘル」
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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