さて、いささか旧聞に属しますが、昨年の夏1本千円以下のジーンズが話題になりました。引き続いて色々な激安衣料品が登場し、いまやすっかり定着した感があります。今回はこの件に関して、個人的な思いを述べてみたいと思います。
実際のところ私の学生時分、今から20年ほど前から物価はほとんど変っていません。であるからこそ、不況だ不景気だといわれながらも大多数のみな様は、何とか生活が成り立ってきているのでしょう。もちろん、20年以上前の「バブルといわれたころと比べれば」、困窮している方の数は増えていますが、それでも諸外国に比べれば失業率もましです。社会保障の制度もいろいろいわれつつ、それなりには機能しています。
そんななかで激安商品が登場して来ました。最初はいわゆる100円均一ショップから始まったと思いますが、やがて様々なところに進出し、遂に頭書のような状況まで進んで参りました。
商品の価格が下がることは一見ありがたいようですが、大変難しい問題が含まれています。今までが高すぎたという品物もなかにはあるのでしょうが、そうではない場合、それは製造・販売の過程で、どこかの誰かに無理が掛かっているということです。
安く製造するためには材料費か、製造工程の経費が、人件費が、どこかでぎりぎりまでの削減が行われているということです。
結果的に、労働環境も劣悪になっていきますし、売り上げが大きくなっても一点一点の利益率が低いために、なかなか給与も上がりません。結果的には生活水準の固定化、場合によっては低下をもたらします。
自分達の目に見えないことというのは、とかく見過ごされがちです。しかしいまこそ「お互い様」の心で、あまりに極端な低価格商品をみかけたら、一端、その背景を考えてみて下さい。ご自分のご家族が、ご友人がその様な環境で働くとすれば、あなたはそれでも激安商品を選ばれますか?
この1月、政府はついにデフレを宣言しました。今ここで私達一人一人が助け合いのこころを呼び起して少しづつの我慢をするべきではないでしょうか。
私達の、子供達の未来のために。
浄安寺住職 八 幡 正 晃
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