皆さま、あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。
さて、今年の干支はウサギです。ウサギといいますと、私の中では小学校で飼育されていたイメージがありますが、「ことわざ」や「文化」のなかにはウサギは割とよく出てくる動物なのです。
日本語には「兎に角」や「二兎を追う者は一兎をも得ず」(厳密にはローマのことわざであるようですが)、「脱兎の如く」などウサギが出てくるものがありますし、『古事記』には因幡の白兎の話があり、「鳥獣戯画」にもコミカライズされたウサギが登場していますし、「かちかち山」では狸を懲らしめる役として登場しています。
また、仏教においては、「ジャータカ」という釈迦の前世・過去世を説いた本生譚があり、その中で、釈尊前世のウサギが、飢えたバラモンに与える物がなかったので、焚き火の中に飛び込んで自らの肉体を施食として提供したという説話があります。
一方、西洋をみますとウサギの繁殖の早さから古代から多産・豊穣のシンボルとされました。ウサギには天敵として、キツネをはじめオオカミ、コヨーテ、ジャッカル、イタチ、タカ、ミミズクなどの猛禽類、野犬など幅広く、ハンティングの的として人間にも狙われる草食動物であり、そのため、ウサギは長い耳と速い逃げ足のほか、発情期を失くして年中生殖行為をするという生き残り戦略を獲得し、このためウサギは非常に繁殖率が高く、繁殖が早いのです。しかし、野ウサギは3月に繁殖期がくるようで、その様子からMad as a March hareと表現されています。この三月ウサギということわざをキャラクター化したのが「不思議の国のアリス」の三月ウサギだと言われてます。
また、ウサギを多産・豊穣のシンボルと見ることから、西方キリスト教世界で行われる、キリストの復活を祝う復活祭(イースター)はこの流れを汲み、生命と復活の象徴を卵とウサギに求めて、イースターエッグやイースターバニーがあります。(ただし、正教会にはイースターエッグはありますが、イースターバニーはありません。)このイースターバニーは、チョコレートでできたものがあり、イースターの時期になると、ヨーロッパでは雑貨屋やチョコレート専門店には様々なウサギの形をしたチョコレートが並べられます。私もドイツのミュンヘンに留学中に頂いたことがありますが、大きさも様々で、赤ちゃんの頭ほどの大きさがあるものもありました。イースターが終わった時には食べるようですが、ウサギの形をしたチョコレートを頭から丸かじりするのは少し気が引けました…また、ウサギの脚をおまもりとして持つという習慣もあります。
一方、動きの速いものの象徴として使われることもあります。イソップ寓話の「ウサギとカメ」では、勝負には負けますが足の速い動物として登場しますし、「不思議の国のアリス」では白ウサギは、遅れてしまうと叫びながら走り回ったりする姿が出てきます。
この認識はどうやら、洋の東西を問わずあるようで、例えばベンツの一部の車種にはシフトレバーに識字率が低い発展途上国での使用を想定して、ウサギとカメの絵が描かれています。
ウサギを意識してみると、これだけ文化や宗教に関わっているものがあるのだなぁと、驚きながら書いてまいりました。ただ、やはり僧侶としてはジャータカの釈迦前世の話が一番印象にあるわけですが、一つの動物に対して多角的に見ることも新たな発見になるのだと勉強になりました。
本年も様々な事柄について多角的に見ていけたらと思う次第です。
天主君山現受院願成寺副住職
魚 尾 和 瑛
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