今年はいつまで残暑という言葉が使われるのであろうか。昔から「暑さ寒さも彼岸まで」といわれるが、もう数日で彼岸になるのにとの思いである。連日の残暑で、ついエアコンのスイッチに手が伸びる。この9日には、東京電力と東北電力管内で7月1日から実施してきた企業や工場向けの電力使用制限令が解除されたニュースを知ってか、多少安堵の感がある。
ところで、私は静岡県三島市に生まれ育ち、自坊を継承している。この静岡県は電気の事情についてはいささか特異な県である。糸魚川静岡構造線と呼ばれる大活断層をもって電力会社が違うことである。西が中部電力であり、東が東京電力である。したがって、静岡県の東部地区は計画停電に振り回されたのであるが、県庁の所在地静岡市や浜松などは現在の電力に依存した生活であることの再認識を強いられることはなかった。そういえば三島で見るテレビも、東京のTBSテレビでは東京電力のコマーシャルが流れ、同系列であっても静岡テレビには中部電力のコマーシャルが登場してくる。今年ほど、どこの電力会社から供給を受けているかを、意識させられたことはなかった。
こうしたなかで電力使用制限令の解除は、精神的にも朗報であった。しかしそれは新たなる東京電力の作戦でしかなかったと、朝日新聞は次のごとく報ずるところである。微妙な表現があるので全文をそのまま転載させていただく。
東京電力が来春から3年間15%程度の電気料金値上げを検討し
ている、と朝日新聞が14日報じた。原発事故の影響で火力発電を増
やすことなどが理由。東電側は否定しているが、仮に15%なら、標準
家庭で月7000円弱の料金が1000円ほど増える計算だ。今のところ、
政府としては認めない構え。東電の姿勢に不快感を表明した閣僚も
いる。原発事故が収束しない時期の電力料金値上げには企業や家
庭などからの反発も予想される。エネルギー政策の練り直しが求め
られるなか、そもそも電力料金をどのように考えるべきか。
これに対して、東京電力は次のようにコメントしている。
9月14日の朝日新聞朝刊で「東電値上げ3年間」との報道がなされ
ておりますが、こうした事実はございません。
当社は、原子力の低稼働により燃料費の負担が大幅に増加し、
23年度第1四半期決算で経常損失を計上するなど、収支は極めて
厳しい状況にあり、これに対応することが今後の大きな課題であるこ
とは事実です。当面、東京電力に関する経営・財務調査委員会での
ご議論も踏まえながら、まずは、抜本的な経営の合理化・効率化を
進めることで、この間、費用削減や資金確保に取り組んでいくことが
不可欠と考えております。
なお、過去の料金改定において過大な原価見積もりが行われてい
るような報道がなされておりますが、この間、当社は原価を適切に計
上し、電気料金の値下げを継続してきたと考えております。 以上
朝日新聞の誤報とするならば杞憂であるが、東京電力値上げかとの報道は今回に限ったことではないと思うと、いささか心配となる。原発事故は、どうも東京電力にとっては「加害者ではなくて被災者である」という認識が見え隠れするようにも思われるのは私だけであろうか。
電気に限らず、難局に対処するには真摯な態度が肝要と思われる。
【糸魚川‐静岡構造線】
フォッサマグナの西縁をなし、本州中央部を南北に走る大断層系。これを境に、西側には中・古生層や変成岩、花崗岩(かこうがん)類などの基盤岩が広く分布するのに対し、東側には新生代新第三紀以降の地層が厚く堆積(たいせき)する。また、西南日本外帯の基盤岩の一般走向も、西側の赤石山地では北東ないし北北東であるのに対し、東側の関東山地では大きく屈曲して北西ないし西北西である。かならずしも1本の断層ではなく、活動の時期も運動様式も異なるいくつかの断層の複合と考えられている。新第三紀中新世前半以前に活動した証拠は得られていないが、第四紀には左横ずれ成分をもつ西側隆起の逆断層活動を行った。その落差は5キロメートルにも達するといわれ、地形にも急崖(きゅうがい)として明瞭(めいりょう)に現れている。長野県内では活断層が知られており、糸魚川‐静岡構造線活断層とよばれている。(日本大百科全書ニッポニカ)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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