師走を迎え、後30日ほどでお正月です。何か1年が経ちますのが非常に早く感ぜられるのは私だけでしょうか。子供のころは1日がとても長く感じ、指折り数えてお正月を待ったものです。
今では、その日にしなければならないことを行っているだけで1日が終わり、1週間が終わり、1ヶ月が経ってしまうのです。現代人は電車や車を使い、携帯電話を利用して毎日を忙しく過ごすために、毎日がそして1年が早く終えてしまうのでしょう。
すこしスローに行動できたならば、どんなにか心の豊かな生活になることでしょう。「いや、仕事と原稿書きは充分にスローですよ」といわれてしまいそうですが。
さて、お檀家さんのご婦人で何人かの方が、ときどき雑巾を作ってきて下さいます。雑巾といえば、昔は余り切れや使い古しの布で作られていましたが、昨今では新品のタオルを四つ折りにして縫ったもので、じつに有難いかぎりです。
ところで小学校で雑巾を持ってくるようにといわれますと、縫うのではなくコンビニで売っている105円の雑巾を持たせる親が多いと聞きます。雑巾を縫うということは、家庭のなかでは見られなくなってしまったようです。
時代が違うのですから、母親が雑巾を縫えるかどうかなどは、問題ではないことは分かります。できる人は縫えばよいし、お祖母ちゃんに頼むのもよいでしょう。コンビニの雑巾であっても、何ら問題ではありません。
そういえば私が小学校5年生のころでしょうか、家庭科の授業で運針をした記憶があります。両手を動かして、うまく等間隔の縫い目にならず苦労したように思われますが、もう「運針」などは忘れられたものなどでしょうか。もはや「千人針」などは今の若い人達は知らないことなのでしょう。
お寺では科学雑巾も使いますが、普通の雑巾も現役で頑張っています。特に本堂の廊下は今でも水拭きで、雑巾でなければなりません。その理由のひとつは、足袋(たび)を履いていることにあります。科学雑巾で拭いた廊下を足袋で歩きますと、洗濯が大変なのです。洗濯機がするのですが、どうも違うように思われてなりません。
新しい雑巾を下ろすときには、必ずその作って下さった方のお顔が思い出されます。「お掃除、頑張ってね」と、応援して下さるようです。
ゆめゆめ掃除が行きとどいてるかなど確認されませんように。
【運針】うんしん
裁縫で、針の運び方。普通、和裁の基本的縫い方であるぐし縫いをいう。(広辞林)
【千人針】せんにんばり
千人針は、第二次世界大戦まで日本でさかんに行われた、多くの女性が一枚の布に糸を縫い付けて結び目を作る祈念の手法、および出来上がったお守りのこと。武運長久、つまり兵士の戦場での幸運を祈る民間信仰である。アメリカ合衆国の第442連隊戦闘団(日系志願部隊)でも行われた。(wikipedia)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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