インドと日本を定期的に往復しだして、約5年になります。インドと日本。同じ時代なのに、ここまで違うのかと感じることがあります。その中でさっと浮かぶのが、「牛」のとらえ方です!
日本では牛は牧場か動物園でしか見ることができませんが、インドではたいていの場所で見ることができます。その辺にいるのが当たり前という存在です。
インドで牛は、シヴァという神様の乗りものとして大切にされています。ちなみに、ネズミは、ガネーシャという商売の神様の乗り物なので、ネズミが家にでると「神様がきた」という人もいます。
話を戻しますが、家の庭で飼われている牛、牧草を食べるために移動している最中の牛、放し飼いにされている牛など様々です。私がいるブッダガヤにも、もちろんたくさんの牛が歩いています。道路・路地に関係なく様々な場所にいて、車が行きかう道路を我が物顔で歩いていたり、道の真ん中で寝ていることも普通です。時には食べ物の匂いにつられレストランに顔を入れてきたり、道ばたで売っている野菜を食べてしまうこともあります。
これだけ牛が色んな場所にいるので、牛の糞が至る所に普通に落ちています。道を歩くときは下をよく見て歩いていないと気づけば踏んでいることが多々あります。実際私も何度も踏んでいます。はじめは気になりましたが、最近では「またか」という感じで慣れましたが。
牛の話をすると、「インドでは牛肉を食べないんでしょ?」と質問されることがあります。答えは、「NO!」です。牛肉を食べる人もいます。
インドは広い国で、東西南北で様々な習慣、そして宗教が存在します。インド国内でヒンドゥー教徒は一番多いのですが、その次に多いのがイスラム教徒です。はじめに書いたように、牛はヒンドゥー教の神様の乗りものなので、イスラム教徒にとっては、牛は神聖なものではありません。
したがって、実際に牛肉が街で売られていて、手に入れる事もできます。私自信自分で購入はしたことないですが、牛肉を使ったMOMOというチベット料理の蒸し餃子をインド滞在中に、よく食べています。
宗教上の理由意外にも、牛が大切にされる理由がいくつかあります。
一つは、ミルクが採れることです。チャイというミルクティーを毎日数杯飲むので、インド人にとって、ミルクはなくてはならないものです。また、赤ちゃんにも母乳代わりに呑ませます。
もう一つは、牛の糞を燃料として使うことです。牛の糞というと汚いと思う方もいるかもしれませんが、インドでは大切な資源です。
ブッダガヤでは、牛の糞を燃料として料理を作っている人がたくさんいます。ガスの値段が大変高いインドでは、糞を炭代わりに使います。牛を持っている人は、牛の糞にわらを混ぜ、壁に貼り付けて乾かします。朝になると乾かした糞を頭のかごの上いっぱいにのせ、売り歩く女性の姿をよく目にします。ちなみに、3枚で1ルピーほどと安いですが、貴重な収入源にもなっています。
牛に関して最も印象的ことがあります。
題名にも書いた「牛はお母さん!」という言葉です。インドの友人と話をしていて、「牛は牛乳をくれる。そのお乳を生まれてから飲んで大きくなった。今は、牛のお乳で作ったチャイを飲んでいる。そして、糞を使ってご飯を作っている。牛はお母さんと一緒のような存在」といったことが大変印象的です。
また、子供達に「家族の絵を描いて」とお願いすると、大多数の子供達がお父さんお母さんと一緒に牛を描いていたのも印象的です。
日本では食用にもなっている牛が、インドでは、お母さんのような存在といわれている。インドで様々な日本の常識を覆されています。
安養寺 清 水 良 将
|