三島地区の宗教者が集い、東日本大震災の慰霊と復興の活動をおこなっております。今年は夏休みを利用して、子供たちに被災地を自分の眼で見てもらい、亡くなられた方の慰霊そして災害を理解していただこうと「東日本大震災子ども学習の旅」といたしまして視察にいってきました。
小学生9名、中学生4名、高校生3名、大学生4名、社会人4名、PTA4名、引率指導員9名、看護師1名、添乗員1名、計39名の視察となりました。被災地視察といいますと、お役人の方、役職の方が中心となりがちですが、明日を担う小学生から社会人までいろいろな世代の人達に自分の眼で現地を見ていただくところに特色があります。研修セミナーでも、それぞれの視点からの意見を知ることができたといえましょう。
名取市閖上(ゆりあげ)や仙台市荒浜地区のように、大津波が押し寄せたとき一面の平野地帯で避難する場所がなくて、多くの人たちが亡くなられたことを知りました。特に4階建ての荒浜小学校に非難された人たちだけが助かったという話には、現実の厳しさを感じざるを得ませんでした。
また石巻大川小学校や今回宿泊をした南三陸町などは、避難所となっているところが襲われたこと、そして何よりもリアス式の海岸であるため外洋が見えず、大津波が目の前に来るまでわからなかったこと、見えたときは間に合わなかったことを教わりました。
今回の視察のもう一つの目的は、被災された子どもさんたちとの交流をさせていただくことでした。現地のみなさの特別な計らいで、さる小学校の校長先生の引率で小学生7名、父兄3名の方々から被災当時の様子を話していただきました。みな話を始めますと、当時の恐怖がよみがえり、沈黙してしまう子、泣き出してしまう子、声を詰まらす父兄と、ある看護師さんは5日間必死で働くことによって自分の子や家族の安否わからない不安を紛らわしたこと、聞いております私どもも涙を流さずにはいられませんでした。
最後に校長先生が、「私たちは助かったのです、だから辛くても少しずつでも大津波のことを語りついていかなければなりません。」と話されました。辛い思いで話してくれる皆さんにどうお答えしたらよいのでしょうか。
出発にあたって、宗教者団体であるだけに、慰霊の方法をいろいろと検討いたしました。
お経を唱えお供え物をささげることは止めにいたしました。すべてのところで黙祷をいたして参りました。たくさんのお花や供物をあげても、それをかたづけるのは誰でしょう。炎天下のお花や供物はすぐに傷んでしまうのです。
そして記念写真は撮らない約束をいたしました。慰霊に写真は必要のないことです。さるお坊さんたちが大川小学校の前でお袈裟をつけて団体で記念写真を撮ったそうです。何のために記念写真を撮るのでしょうか。心ない行動が、ご遺族の方々、現地の人々を傷つけることは、絶対に避けなければなりません。
それぞれの子どもたちが、参加者がいろいろな思いを抱いて帰ってきました。その心に触れましたものをそれぞれの立場で大切にしていきたいと思っております。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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