今年の夏は、大変暑かったですね。その暑い中でも、5月号で触れた神戸の「安養寺」の再建工事は続いています。造ってくれているのは、皆さんもご存じの「宮大工」さんです。
毎日、奈良から神戸まで片道1時間程かけて車で通っていて、暑い直射日光が降り注ぐなか、朝7時過ぎには到着して、夜は6時か7時頃まで作業してくれています。
4月から工事が始まり、その頃は寒く長袖で作業していたのが、半袖になり、夏になって日差しが強くなると、日に日に肌の色が黒くなっていき、心なしか頬がこけた印象もうけます。その姿を見ると、一生懸命造ってくれていることが伝わってきます。
大まかな部分は機械でカットして、そこからは「宮大工」さんの腕の見せ所。ノミを巧みに使い、細かい形を整えていきます。そして、木と木を組み合わせる部分は、ほんのちょっと大きい寸法で造っているので、みんなで力を合わせ木を押したり、ハンマーで叩きながらはめ込んでいきます。一つとして同じ形、同じ寸法のお寺はないので、宮大工さんの経験や技量、チームワークが問われる作業だと感じます。
今回作業している「宮大工」さんは、日によって違いますが、だいたい5人です。その方たちの年齢を聞くと驚きます。頭領は、なんと33歳。その他、27歳、28歳という私と年齢が変わらない人も作業しています。年齢だけを見ると若いですが、皆さん中学校や高校の年齢の時から弟子入りして修行を積んだ人なので、経歴は16年や17年と長い方ばかりです。
滅多に「宮大工」さんと話をする機会がないので、ここぞとばかりにいろいろ質問を投げかけてみました。
「「宮大工」さんと「大工」さんの違いは?」
「「宮大工」と「大工」の正式な区別はない。ただ、「大工」のなかで、
お寺や神社などの建設補修に携わる特別な人を「宮大工」と言うだ
けで、厳密に資格があるわけでもない。」
「若いので、気が引けることがありませんか?」
「俺がやらないと誰がやる?という気持ちで毎日仕事をしている。」
「技術を継ぐ人がいないと聞きますが、本当ですか?」
「そんなことはない。修行をしたいという若い人は結構いるけれど、
ただ、何となくやりたい人はすぐやめていく。これしかない!と決心
してくる人は長続きして、覚えるのも早い。結局は、やる気次第。」
「大工を続けている中で辛かったことはないですか?」
「好きなことをやっているから、辛いはずがない。毎回、修復するお
寺などの形が違ったりするので、どうやって直そうか。どこにどのよ
うな組み方がいいのか?と考えるのがすごく楽しい。」
「最後に、「安養寺」をどのような思いでお寺を作っていますか?」
「一から木造で本堂を造ることが少ないなか、このような場を貰えた
ことはうれしい。1000年とは言わないが500年ぐらいはちゃんと残っ
ていってほしい。そして、あわよくば、文化財になってくれたらうれし
い。」
すべてに笑顔で答えてくれました。
今回「宮大工」という職人の仕事を5ヶ月ほど毎日見ていますが、技術に驚いたのはもちろん、それ以上に印象に残っていることは、作業中はもちろん、仕事に来てから帰るまでの姿です。
あいさつはもちろんのこと、会話をするときの言葉遣い、忙しくても、丁寧に説明をしてくれる姿。また、作業中は手袋を絶対に外さず、木に手垢をつけない徹底ぶり。帰る時は、全てをほうきで掃き、綺麗にゴミがない状態で帰ります。
当たり前のようですが、目立つ部分だけでなく、見えない部分・人と接する姿、周りに気を配る姿など、言葉では伝えにくいですが、作業風景をみて、これが本当の職人であり、プロなんだという印象を受けました。
これから「僧侶」として進んでいく自分自身の姿を考えさせられる、貴重な姿を、毎日見せてもらっています。
安養寺 清 水 良 将
|