何度も紹介させていただいている再建中のお寺ですが、現在、壁を造る工程に入りました。木や釘にこだわってきましたが、壁も昔ながらの「土壁」で造っています。
私自身は福井の田舎出身なので、土壁自体をみたことはありますが、一から壁を造る工程を見るのは初めてなので、しっかりと見せてもらい、いろいろ質問させていただきました。
まずは、竹を組むことから始まります。竹を組むための専門の職人が、細長い竹を一本ずつ壁の長さに合わせながらカットし、ばらばらの長さの竹を組み合わせて、縦と横、格子状に並べ、縄で一本ずつ結んでいきます。もちろん機械を使えるはずもなく、一つずつ手作業です。
身長の1.5倍ぐらいの壁の大きさですが、慣れた手つきで一つずつ竹を結んでいきます。
仕事中で失礼と思いながらも「何年続けているのですが?」と質問すると「もう40年以上になるね。あっという間だった。」と答えながら、手は絶えず動いていました。
ただ、「仕事を始めた頃は、休みがないぐらい忙しい毎日だったのに、今ではすっかり仕事が減ってしまった。時代は変わったね。」と寂しそうな顔で話をされていたのが印象的でした。
組み終えた竹に、今度は、別の縄を10センチ程の感覚で結んでいき、余った縄を15センチほど下に垂らして、予め横に通してある木の部分に釘を打って止めていきます。これもまた一本ずつ手作業で、結んでは、釘で留めての繰り返し。ちなみに、土を塗るときに土が垂れるのを防ぐために必要だそうです。
竹を組み終えると、次は、左官屋さんの出番です。組み上げた竹に土を塗っていきます。
塗る土もただの土ではありません。土に短めに切った藁をいれ、水をかけてドロドロになるまで練っていきます。土と藁がうまく混ざったら、そのまま外で1週間以上放置します。そると、混ぜた藁が発酵してすごくクサイ臭いが辺り一面に漂ってきます。例えるなら、馬小屋や動物園の臭いでしょうか。臭いが強ければ、強いほど、塗って乾いたときに頑丈になるいい土だそうです。
その土を、本堂内へ三輪車で運び、運んできた土を、塗る役の人が持っている木のお皿にスコップで渡します。塗る役の人は素早く土をコテに乗せ、組んだ竹に塗っていきます。一連の流れ作業でチームワークの良さを感じました。
横で見ていると、簡単そうに塗っていきますが、スムーズにコテに土を乗せて壁に塗れるようになるまでには、結構な修行がいるみたいです。片面を塗りおえると、乾くまで待つのみ。
片面を塗っていくと、格子状の竹の間から、土が盛り上がったように出てきます。これが予め結んで垂らしてある縄と同じように、反対側の壁を塗る際に土が垂れるのを防ぐ役割があるみたいで、一つ一つが無駄なく考えられている事に、長年蓄積された技術を感じました。
左官屋さんにもいろいろ質問をさせてもらいましたが、「このような藁を混ぜた本格的な土壁をする機会は、ほとんどないし、これだけ大きな建物を土壁で造るのは、たぶんこれからの人生ではないだろう。一番の作業になるだろう。」といっていました。「最近は、アレルギーが出ないように、壁に簡単に乾く土などを用いるところが少しずつ増えてきている。結局は昔のやり方が理想的で、その技法に戻ってきている」とまた印象的な言葉を聞きました。
たくさんの職人さんと触れ合うことができ、いろいろな貴重な言葉を聞くことができ、本当に素晴らしい縁を頂いているなと感じます。
安養寺 清 水 良 将
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