大寒も過ぎ3日には節分、4日には立春を迎えるが、今が1年の内で最も寒い時期であろうか。植物もこの寒さから身を守るため、いろいろな努力のもとで春を待っている。広葉樹が、冬には葉を落とすのもそのひとつであろう。
野菜なども糖度を上げて、凍結から身を守っているのであるが、それは同時に、甘くて美味しい野菜を提供してくれることになる。俗にいう「寒じめほうれん草」「寒じめキャベツ」などはその代表であろう。
ときどきメルマガに登場するように、わたしも家庭菜園を楽しんでいる。曲がったキュウリ、いびつなトマト、コガネムシがかじったサツマイモと、とても他人様には差しあげられない野菜も、我が家では愛おしく美味しく食べている。
今一番人気は、「大根おろし」である。青首大根は、青首の部分と、先の細い部分はさける。いわゆる真ん中の最もよい部分を、厚めに皮をむく。少し贅沢のようにも思うが、それなりの収穫がある時は許してもらう。その大根を、「鬼おろし」でする。「する」という漢字は、「擦る」「摺る」「擂る」「磨る」「摩る」とあるが、「砕」という字で、「する」とルビするが適当のようにも思う。
普通のおろし金では駄目なのである。普通のおろし金でおろした「大根おろし」は、焼き魚の添え物にしかならず、メインディシュにはならないのである。「鬼おろし」でおろすと、大根は5oの粒となる。それに「鰹節」「海苔」「昆布」等をトッピングしてお醤油かけていただく。まさしく「大根おろしサラダ」となり、普通のおろしでは味わえない大根の食感、そして大根の甘みと絶妙な一品である。肉料理や魚料理と、あらゆるものに合うのである。
どんなに素晴らしい料理であっても、いつまでも最初のうま味が続くわけではないが、そこで「大根おろしサラダ」を口にすることによって、少し大袈裟であるが最初の感動が蘇ってくるのである。
そこでメルマガとしては「粒々大根おろしサラダ」の写真を掲載しなければならないと思ったとき、とんでもない記事を書いてしまったことに気がついた。大根おろしの写真など、どう撮ったらよいのであろうか。色は白、5oの粒におろしてあるといっても、写真にはその姿は写らないであろう。白い器にでも盛りつけたらなど考えると、わたしの頭は真っ白となった。
そこで「鬼おろしがね」の写真を紹介させていただくことでお許し願いたい。「おろし金」といっても、「鬼おろしがね」の歯は竹でできているので、「かね」は平仮名の表記がよいであろう。現在3つの「鬼おろしがね」を所有している。
もしこのメルマガを読まれて、「鬼おろしがね」の購入を考えておられる方に、ひとつだけご注意願いたい。「鬼おろしがね」は「おろす」といっても、歯で大根を引っ掻くといったのがよいのかもしれない。普通のおろし金のように上下に動かすのではなく、「引く」だけでおろすのである。往復運動は怪我のもとである。
【寒じめ】
冷たい空気に野菜をさらすことを寒じめと呼び、これによって甘みが増し、ビタミンC、ビタミンE、β―カロテンのいずれも増加する。野菜が寒さに耐えるために葉の水分を減らし、糖を増加させるためである。ビタミンも糖から作られるので増加するというわけだ。いっぽう硝酸は減ることがわかっている。葉は厚く、姿は開張型。(ルーラル電子図書館)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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