家庭菜園を始めて十数年になろうか。いろいろな野菜に挑戦してきた。変わったものでは、お正月の黒豆に入っている赤いひょうたん型をした「チョロギ」をつくったが、あまり食することはなかった。
今はキュウリとナスが最盛期で、味噌汁の具は毎日ナスであり、キュウリの糠漬けがサラダ代わりである。お寿司にカッパ巻きがあるが、我が家のカッパ巻きは糠漬けを一本そのまま芯として巻いてある。豪快であるが、お寿司を食べているというよりか、キュウリをかじっているようでもある。やはり、食べ物はバランスが大切である。
ところで今まで敢えて作らなかった作物があったが、昨年挑戦をしてこの5月に収穫をした。それはニンニクである。ニンニクの産地は青森県であり、涼しい気候が適しているようであるが、最近は暖地向けの品種が改良されたこともある。しかし、元来ニンニクはお寺には不向きな野菜である。
「律令」のなかに、僧尼は五辛(ごしん)を食することが禁止されているからである。日本霊異記(にっぽんりょういき)上巻第4話には「五辛を食ふは仏法の中の制にして、聖人用ゐ食へば罪を得る所无きのみ」とある。
ちなみに「五辛」を辞書でひくと、次のごとくである。
仏語。五種の、辛味や臭みのある野菜。忍辱(にんにく)、葱(ね
ぎ)、韮(にら)、浅葱(あさつき)、辣韮(らっきょう)などの五種をい
う。仏教では、色欲や怒りの心などが刺激され助長されるとして、
僧尼がこれらを食べることを禁じた。五葷(ごくん)。
ところが五辛は大好きで、葱は九条葱、根深葱、下仁田葱とつくっている。料理にはニンニクを使うことも多く、まさしく破戒僧ということになる。
こうした考え方は、どこから生まれてくるのであろう。仏教の究極の目的は悟りを得ることであり、毎日の生活はその目的のために邁進することにある。したがって仏道修行するために必要な、最低限の食物をのみ摂取すればよいということから、精力がつくものは必要ないという論理が働くのである。
ニンニクをつくること、そして食することに、いささか躊躇があったことをお伝えしたかった。
さらには、先般、「かんなみ仏の里美術館」を訪れたおり、高源寺の境内でまさしく修行中の精悍なお釈迦さまの尊像にお会いしての思いである。
【かんなみ仏の里美術館】
函南町桑原区では、平安時代の「薬師如来像」や鎌倉時代の「阿弥陀三尊像」など、二十四体の仏像群が、里人の厚い信仰心によって守られてきました。
これら仏像群の散逸を防ぎ、後世に保存継承していくための施設として、明治30年代後半に桑原の有志により、長源寺の裏山中腹に「桑原薬師堂」が建てられました。
2008年(平成20年3月)に桑原薬師堂の二十四体の仏像群が、桑原区から函南町に寄付されました。
寄付された仏像群には、国指定重要文化財の阿弥陀如来及両脇侍像(略称・阿弥陀三尊像)の他に、静岡県指定有形文化財(薬師如来坐像、毘沙門天立像、聖観音立像、地蔵菩薩立像、十二神将立像)があり、その中にも全国的に貴重な文化財が含まれています。町民の財産である貴重な文化財を、後世に保存継承するとともに、多くの方々が鑑賞し、学ぶことができる施設として「かんなみ仏の里美術館」が設置されました。里人の心に守られてきた仏像群が、皆さまのご来場をお待ちしています。(ホームページより引用)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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