私が住んでいる関西は、ちょうどお盆真っ最中です。関東方面では7月にお盆が行われていますが、お盆の際お墓参りに行かれましたか?日本ではお墓に関する様々な問題が連日ニュースでも取り上げられていますが、私がよく行くインドではこのような問題はありません。
それは、インドで一番多いヒンドゥー教徒は、お墓を作りません。一般的に、亡くなった人は、火葬にして遺灰を川に流します。ただ例外として、子供が亡くなった場合は、火葬せずそのまま川に流します。(最近は火葬するように変わってきているようです)
流してもらう川もどこでもよいわけでなく、最も良いとされているのは、ガンジス川です。ガンジス川は、「ガンガー」と呼ばれ、聖なる川としてヒンドゥー教徒に大切にされています。大変長い川で、全長2525q、ヒマラヤから始まり、東インドのベンガル湾まで流れている川です。
その長いガンジス川の中でも、最も重要な街が「バナラシ」(ベナレス)と言われる街です。すべてのヒンドゥー教徒は一生に一度「バナラシ」を訪れて沐浴をするといわれており、沐浴をすることによりこの世で犯した罪が消えると言われています。
また、この場所から遺灰を流してもらうことにより、死後輪廻から解脱することができると信じられています。
「バナラシ」はヒンドゥー教徒だけでなく、世界中の旅人にとっても憧れの場所になっており、日本人の旅人もたくさん訪れています。大変衝撃を受ける人が多く、訪れた人からよく聞く言葉が
「考えが変わった。」
「死というものを考えるようになった。」
です。
なぜこのような言葉が出るのかというと、その理由は2つあります。
一、普段目にすることがない火葬を数メートルほどの距離で全て見 ることができること。
二、火葬が行われているすぐ横で子供達が遊び、沐浴をし、体を洗 っているという日常が広がっていること。
実際「バナラシ」を訪れると、ガートと呼ばれる川沿いの遊歩道が数q続いていて、沐浴をする人や洗濯をする人、チャイを飲む人、お風呂代わりに体を洗い飛び込む人、クリケットをする子供達、物売りなど日常風景が広がっています。その中に大きな火葬場と小さな火葬場が2つあります。そこでは次々と遺体が担ぎ込まれて火葬されていくのですが、火葬場の周りは親族以上に観光客が多い状況です。
私もその場所に座って火葬を見ていると、次々と遺体が運ばれてきました。一度川まで遺体を運んでいき、水につけて清めてから火葬を始めます。
しばらく見ていると、私のすぐ目の前でいきなり係の人が木を積みあげ火葬の準備を始めました。その距離2メール程。その上に遺体が置かれ、火葬が始まりました。
遺体は布でくるまれている状態ですが、燃えるにつれて手や足が垂れ下がり、頭が後ろにずれてきます。2,3時間ほどで火葬が終わり、最後遺灰を集められてガンガーに流します。最後まで見届けて、ふと横を見ると数メートル先で、たこ揚げを楽しんでいる子供の横に、たくさんの洗濯物が干されていて、川では体を洗っている人がいました。
また、「貧しくて薪が買えない人にドネーションをしないか?良いことすると、良いことがおこるよ」といいながら火葬場の詐欺師も寄ってきました。
この時点で今までの自分自身の常識は覆ります。今までの常識が常識ではなかったと衝撃を受けると共に、「死」が、非日常ではなく日常に溶け込んでいる「バナラシ」の姿に、これが本来の人間の生活であり、「死」も終わりなどではなく、通過点なのだと感じました。
あくまでも、私自身が感じたことですが、この雰囲気は実際に感じてもらいたいので、是非、一度訪れて欲しい場所です。
安養寺 清 水 良 将
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