8月にインドネシアのバリ島を訪れました。久方ぶりの海外ということで、色々と観光をして参りました。まず、インドネシアはとても大きい、と言っても範囲が広い国です。また、ムスリムが多いのも特徴です。しかし、今回訪れたバリ島だけはヒンドゥー教徒が9割を占め、独特な文化を形成しているところであります。ちなみに、インドネシアは法律によってイスラム、キリスト、仏教、ヒンドゥーのどれかに所属していることを公的な書類に記さねばなりません。もちろん、それ以外の宗教が迫害されている、というわけではありませんが、基本的には、国家による4つの公認宗教があります。入国審査の際の書類には、宗教の欄が当然あります。
バリ島は、ヒンドゥーの島、神秘の島と言われることが多いですが、島内には数百のヒンドゥー寺院があり、様々な神を奉り、日々の生活の中でバリ人は神へ祈りを捧げて生きています。バリというと、ケチャやバロンダンスといったバリ舞踏といったものが有名ですが、もちろんこれも宗教儀式であり、寺院や村の集会所などで今でも行われています。観光化と伝統の保持ということが、最初に地元の人達によって考えられたのもバリであり、多くの文化人類学者などがバリをその対象として研究されています。私が大学院で勉強しています、宗教学にも影響を与えたクリフォード・ギアツもその一人で、『バリの親族体系』など、バリを調査地とした様々な本を出版しました。実は、この本を読んでバリに行こうと思い立った訳でもありました。
今回は6日間とあまり滞在が出来ないので、限られた所しか見ることができませんでしたが、特に印象に残ったのがブサキ寺院でした。この寺院は、バリヒンドゥー教の総本山であり、多くのバリ人が参拝に訪れ、神々に祈りを捧げています。今回、現地のガイドと共に参拝してきたのですが、私が仏教の僧侶であるということを知って、ブサキ寺院の1番の聖地、いわば奥の院まで案内し、正式な参拝をさせて貰えました。
また、バリ島内の寺院で唯一、仏教の影響を受けた建築だと言われており、高い階段によって本殿にあたる寺院まで登っていきます。ヒンドゥーには、カーストつまり階級が存在していました。というのも、インド程厳密ではなく、現在ではあまり意識されていないとガイドから聞いたので、存在していた、と表現する方が良いかと思います。カーストによってそれぞれの建物があり、1番上がクシャトリア、王族の為の寺院であり、現在でもバリの王族が参拝しているとのことでした。
正式参拝は、ブサキ寺院のバラモンに聖水をかけて貰い、花やお菓子、お香などを神々に捧げ、サンスクリット語の経(当然ヒンドゥー教の)を唱えるものでした。最後に聖水につけたお米を額につけてもらい終了となります。このお米は一日付けたままで、自然に落ちるまではそのままが良いのだ、とガイドに教わったので、少し違和感を覚えながらもホテルに夜帰るまで付けたままでいました。
ブサキ寺院を参拝した際に、多くのバリ人が供物を捧げ、様々に祈る姿を見ましたが、宗教の持つ力強さを感じずにはいられませんでした。また、葬列や日本で言う法事に来た人達など様々な人々を見ていると、ヒンドゥー教の信仰と生活が密接に結びつき、生活の中に宗教があるのだ、と改めて感じました。
日本の仏教も宗教文化として今でも生き残っていますが、生活の中に宗教が色濃く残り、良い形で関係を保っている姿は羨ましくもありました。
ムスリム 【(アラビア)muslim】
《神に帰依・服従した者の意》イスラム教徒のこと。ムスラマ。モスレム。→イスラム教
天主君山現受院願成寺副住職
魚 尾 和 瑛
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