平成21年6月20日をもって煙草を止めた。禁煙ではない。煙草を吸うのを禁止したのではなく、違った表現をすれば卒業したのである。
その当時セブンスターが300円であったろうか。18歳から47年間ほとんど休むことなく吸い続けてきたから、1日1箱として17,155箱になる。吸い始めた昭和43年が100円で現在が440円であるので、1箱平均250円として420万円余りとなる。すこし金額の大きさに驚いたが、嗜好品としてそれなりの楽しみをいただいたので、「もったいない」とは思わない。
以前からお寺の役員さんに禁煙を勧められていた。そうした方は、おおかたヘビースモーカーであり、お医者さんに止められてからの禁煙であった。子どもにぜん息の気があったので、家の中では吸わなくなっていた。私も還暦を迎えそろそろ煙草も止めても良いかなと思っている時期でもあり、その年の初めに「煙草を止めること」を宣言をした。今までに一度も禁煙をしたことがなかったので、ほんとうに止められるのか不安ではあったが。
お檀家さんから何時禁煙するのかと催促めいた話が多くなり、意を決する時が来たのである。ちょうど書院建設の上棟式が近づいていたので、その場で宣言をすることにした。本堂と同じように、新しい書院も当然ながら禁煙となると思ったからである。式典も無事に済み、挨拶の折に発表をした。皆お酒も入っていたので、「無理」といった声が多かったようにも思う。
宣言後は幸いに一度も煙草を口にしたことはなく、禁断症状というものもなく、誠にすんなりと止められたようである。
しかし、夢の中で2度ほど煙草を吸ったことがある。夢の中で煙草を口にすると、急に鼓動が高鳴り、誰かに見られていないかと辺りを見回し、冷や汗すら出てくるのである。まるで何か悪いことでもしているようで、とうとう息苦しくなって叫び声を上げようとした時、目が覚めたのである。これが禁断症状というものであろうか。
たぶん今後煙草を吸うことはないと思うが、愛煙家からは「根性なし」と言われた。楽しく吸っていた煙草を、周りに言われて止めたりするのは根性がないからだというのである。
行政も禁煙や分煙のキャンペーンをしているが、国家が煙草の販売を許可している以上、健康被害について言う資格はない。三島市の煙草消費税は年間7億円強であるが、喫煙者が減るなかで煙草の値上げによって何とか数字を保っているようである。自治体にとっては重要な財源となっていることは現実であるためか、積極的な禁煙は口にしない。
こうした原稿を書く時を始め、思考をひと休みするときのグッズとしては、煙草とコーヒーは最高のアイテムである。完成したときの一服は、至福の境地である。
やはり煙草の効用と害とを同じ天秤で量ってはいけないようにも思う。
煙草の写真が必要であるが、持ち合わせがないので外の写真で勘弁を請う。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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