去る、3月8日私が所属している神戸市にある安養寺において、震災からの復興、落慶法要が執り行われました。
安養寺の建物自体は、戦時中に建物疎開で壊され、その後仮の本堂として平屋の建物が作られましたが、その建物も20年前の阪神淡路大震災で全壊しました。
その時は他の方が住職をしておられましたが、13年前に私の父が住職になりました。
今でも忘れません、父親がいきなり「神戸に行くぞ」といいだし、旅行かと思いきや「今日からこのお寺をみていく」といきなり今の安養寺の場所に連れてこられた日を。
そこには、あまり整地されていない境内に、小さいプレハブの倉庫や住居がぽつんとありお寺にはとうてい見えない風景でした。
落慶法要当日は、3月ということで寒さの心配をしましたが、前日の夜降り続いた雨も当日の朝には上がり、9時半の稚児行列の時間になると、青空も見え始めました。
稚児行列は、檀家さんのみならず、そのお友達の方も参加してくださり、雅楽の演奏者を先頭に、僧侶と稚児が交互に並びながらの行列です。実は、私の上の子二人と、兄の上の子一人も、黒い衣と赤いお袈裟のこぼんさんの格好で参加をしました。
都会では珍しい行事なので、道行く人たちは「お稚児さん珍しいね。可愛いね」と笑顔で見ておられ、付き添いのお父さん、お母さん方は我が子の可愛い姿を一生懸命カメラに納められていました。
お寺に到着し本堂内に入っていくと、中では膝と膝がくっつく程ギュウギュウ詰めで檀家さんが座られて到着を待っておられました。
その中をお稚児さんの行列が進んでいくと、たくさんの笑顔でのお迎えと「可愛らしいね。こんなん見れて嬉しいわ」という声がいたるところから聞こえて、
お祝いの雰囲気がどんどん増してきました。
その後、1時間ほどの法要の後、落語の席へ。
今回は私が最初にインドに行った際に一緒だった「桂吉弥」さんに来ていただき、お弟子さんと共に一席ずつお話して頂きました。
終始笑い声が絶えず、慣れた方は「よっ!」というかけ声もかけて下さり場を盛り上げて下さいました。
楽しい時間、嬉しい時間はあっという間に過ぎるもので、約4時間の落慶法要は無事終わりました。
特に印象に残っているのは、皆さんの笑顔。
今までお寺から足が遠かった人たちや、息子や孫を連れて参加される人たちなど総勢350人以上の方がお越しになり、たくさんの笑顔で落慶法要に華を添えて下さいました。
帰り際には、「立派な本堂が出来て嬉しいわ。やっぱり木の本堂はいいね。」というお褒めの言葉を頂いた一方「長かったね。お疲れ様でした」という労いの言葉もたくさん頂きました。
震災から20年。私たちが来てから13年。
本当に長かったですが、それ以上に無事完成した、そしてたくさんの方が集まって下さった嬉しさでいっぱいです。
また、一生で一度体験できないであろう、一から伝統的な工程でお寺を建立する貴重な機会に出会えたことに感謝の気持ちでいっぱいです。
しかし、これがゴールではなく、ここからがスタートだと感じております。
ここから安養寺の新しい歴史が始まり、たくさんの人が集う場所となり、なにより祈りの場となっていくことを願っております。
最後に、この震災からの復興が、東北で震災に遭われた方々に「時間がかかっても復興できる」という励みとなれば幸いです。
私事ですが、今回で私の連載が終了になります。メルマガを書く貴重な機会をくださった魚尾上人、メルマガに関わる皆様、読んでいただいたすべての方に御礼申しあげます。ありがとうございました。
安養寺 清 水 良 将
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