恒例となりましたお檀家さんとの大本山増上寺参拝と、国立演芸場での2月中席の観覧にいってきました。多少遅くなりましたが、初詣と初笑いとの趣向となりました。
「1年に一度、増上寺の阿弥陀さまに会いに行こう」の声かけに、たくさんの皆さんが参加して下さいました。毎年、阿弥陀さまにお目にかかれることの「よろこび」を味わっていただきたいとの思いから、始まったお参りです。したがいまして大殿に上げていただき、阿弥陀さまの近くまで足をすすめ、そのお顔を拝するのです。
私どもが阿弥陀さまに話しかけますと、阿弥陀さまもお話をして下さいます。この1年間の出来事、そしてその気持ちを話させていただくのです。私などはおおかた懺悔(ざんげ)ばかりで、お叱りをうけることが多いのですが、この1年を反省いたし、これから1年間頑張ることのできる原動力を頂戴いたすのです。
今までに味わったことのない「すがすがしい気持ち」になれます。お寺がお檀家さんがそして家族が、つつがなく過ごすことができましたことが、この上ない喜びと感じられるのです。そしてその喜びを心から感謝申しあげます。お檀家さんも多少の緊張感のなかで、きっと同じようなお参りをさせていただいているのでしょう。
午後からは国立演芸場に移動して、落語、漫談、曲芸、獅子舞と楽しみます。中休みのあと、いよいよ大喜利は落語家によりますお芝居(鹿芝居)が演じられます。今年の演し物は「品川心中噂達引(うわさのたてびき)」です。
品川宿の筆頭女郎を張ってきたお染は、寄る年波には勝てず客も減り、パトロンもない。 勝気な女だけに恥をかくくらいならいっそ死んでしまおうと決心したが、一人より二人の方が、心中と浮名が立ち死に花が咲くからと、独り者で馬鹿で大食らいで助平で欲張りな貸本屋の金蔵に目が止まった。
品川の浜へ連れだし、「おまえばかりを殺しゃあしない、南無阿弥陀仏」と金蔵を突き落として、続いてお染も飛び込もうとするが、パトロンが付いたとの話に心中を中止。
飛び込んだところが遠浅だったため助かった金蔵が、お染めに仕返しをするというドタバタ劇。お腹を抱えて笑う3時間でありました。
増上寺でいただいた清浄な気持ちを、国立演芸場に置いてきぼりにしてしまったのではなかろうかと、危惧する住職であります。お参りと笑いをお檀家さんと共有できたことがなによりです。
ざん‐げ 【懺悔】
(1)(仏教では現在も「さんげ」とよむ)仏語。過去に犯した罪悪を告白してゆるしを請うこと。また、過去の罪悪を悔いて神仏や人々に告げわびること。
(2)過去に犯した罪悪を後悔して、人に打ち明けること。一般的に、他人に話しにくいことを打ち明けることにもいう。
(3)罪悪。あやまち。
(4)他人の過去の罪悪、落度をあげつらうこと。悪口。
(5)キリスト教で、罪のゆるしを求める行為をいう。告解。告白。悔改め。(日本国語大辞典)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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