フォカッチャをご存じであろうか。イタリアの素朴なパンである。小麦粉が主食の国では、どこでも小麦粉に塩と水、食物油とイースト菌を加えて焼かれたパンが作られる。プレーンが基本であるが、イタリアではオリーブ油やハーブを入れてアレンジされる。ビールやワインの「つまみ」としても利用できる。
　今回はハーブ塩をつかい、刻みベーコンを混ぜた。オリーブの実とローズマリーをトッピングして、粉チーズをふって焼いた。本来のフォカッチャではないようにも思えるが、楽しませていただいている。

　当然ではあるが、米が主食の国に生まれ、本格的にパンを口にしたのは、小学校の給食である。脱脂粉乳とともにコッペパンも評判がよくなく、特に「脱脂粉乳はまずい」「給食は美味しくない」といわれたが、私にとってはご馳走であった。幸いにもお寺で生まれ育ったので、ひもじい思いをしたことはなかったが、ぬか漬けと沢庵が主たるおかずであったといっても過言ではない食生活では、給食はご馳走であった。しかし「給食が美味しい」とは言えなかったことは、今も忘れない。
　みんなで同じものを食べる給食は、今でも素晴らしいことだと思う。給食が脱脂粉乳とコッペパンであったのは、戦後アメリカやユニセフの援助によるものであったこと、家庭の事情がある場合には給食費が免除されたことなど、当時知るべくもないことでした。
　中学からはお弁当でしたが、決して自慢のできるようなお弁当ではなかったので、中学校でも給食であればよいのにと思うことがしばしばあった。

　現在のある日は、朝パンを食べ、昼には麺類を食べる。夜は白いご飯とじつに豊かな食事である。一般の家庭であればこのパターンは問題とならないが、寺であるといささか困ることがある。朝、仏さまにご飯の替わりにフォカッチャを供えるわけにはいかないのである。ご飯を供え、なおかつ「今日はこんなパンを焼いてみましたのでどうぞ」とお供えするのは可であるが。
　昭和40年代のころであったろうか。お盆の棚経に伺うとお茶を点ててくれた。改めて仏壇を見ると、そこにはパンとコーヒーがお供えしてあるではないか。それとなく尋ねてみると、「主人は、朝はパンとコーヒーでしたので」と。

　今では何でもなく思えるが、当時は驚きであった。明日大変にご厄介になったお医者さんの年忌法要がある。白いご飯とともにコーヒーも供えさせていただこうと思っている。先生のお宅を訪ねると、先生みずから美味しいコーヒーをいれてくれたからである。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久

　ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

　教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

　寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

　インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

　毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

　諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久