「年月を 松にひかれて 経る人に 今日鷲の 初音問かせよ」
源氏物語『初音』の巻
宗祇法師は、古今和歌集の奥義を武将で歌人である東常縁から、授かったといわれております(古今伝授)。最近の研究で、その伝授がおこなわれた場所として、わが願成寺説が有力となりました。
そしてその奥義は、公家で国文学者であった三条西実隆に伝えられました。その実隆は、毎年お正月には、かならず源氏物語『初音』の巻を読むのが習わしでした。
新春を迎えた光源氏の屋敷六条院が、この世の極楽浄土のごとく素晴らしかったと描かれているところからの読誦でありました。
長年源氏物語の講座をおこなっておりますが、歴史が応援してくれているようにも思われます。
現代の若者は、「初音」というと、「初音ミク」でしょうか。
とう‐つねより 【東常縁】
室町中期の武将、歌人。美濃国(岐阜県)郡上の領主。本姓平。別称東野州。出家して法号素伝。二条派の流れをくみ、堯孝の門人。宗祇に「古今和歌集」解釈の秘説を伝授。これより「古今伝授」が始まったという。著作に「東野州聞書」「新古今和歌集聞書」などがある。応永8〜文明16年頃(1401〜1484頃)
さんじょうにし‐さねたか 【三条西実隆】
室町後期の公卿。歌人。内大臣公保の次子。後花園、後土御門、後柏原、後奈良の四天皇に仕えて内大臣に至り、出家して逍遙院堯空と号した。飛鳥井雅親、宗祇に学び、三条西家歌学の祖となる。「源氏物語」をはじめ多くの古典を書写、校合、研究した。著に「多多良問答」「高野山参詣日記」、家集「再昌草」「雪玉集」など。60年にわたる日記「実隆公記」は貴重な史料。また、書をよくし、その筆蹟は「眺望集」「書画大観」「名家筆蹟集」にみえる。康正元〜天文6年(1455〜1537)
はつね【初音】
「源氏物語」第二三帖の巻名。源氏三六歳の正月。源氏の、六条院と二条院の御方々への年賀回り、臨時客、男踏歌(おとことうか)などを中心に、新年の六条院のはなやかさを描く。玉鬘十帖の第二。
はつね ミク【HATSUNE MIKU 初音ミク】
初音ミクは、クリプトン・フューチャー・メディアから発売されている音声合成・デスクトップミュージック(DTM)用のボーカル音源、およびそのキャラクターである。
ヤマハの開発した音声合成システム「VOCALOID」に対応したボーカル音源で、メロディや歌詞の入力により合成音声によるボーカルパートやバックコーラスを作成することができる。息継ぎ、強弱も入力可能。また、声に身体を与えることでより声にリアリティを増すという観点から女性のバーチャルアイドルのキャラクターが設定されている。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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