初回の自己紹介でも少し触れましたが、今から4年前の2013年1月9日、僕は当時通っていた大学を休学し、192日間に及ぶ、世界一周の旅に出ました。
なぜ旅に出るのか。「違う世界を見て視野を広げる」「異文化を理解する・学ぶ」「自己成長」・・・理由は多々あります。しかし、それらの大半は後付けの理由に過ぎません。僕はただ、「せっかく地球って星に生まれたんやから、地球ってもんをしっかり見て、感じたい!!それをせんと死ぬんはもったいない!!」(いきなりコテコテの関西弁ですが)というどうしようもない心の声を、叫びを、ある時感じたのです。
ではなぜそう思うようになったのか。そのキッカケはいくつかあるのですが、その中でも最も大きなキッカケが、当時僕が所属していた学生団体での経験でした。その学生団体は、東南アジアのラオスという国に教育支援を行うため、日本での様々な活動で資金を貯め、実際に年に2回、現地視察(スタディーツアー)を行うという活動をしていました。僕は大学1年の夏休みにラオスの支援先の村を訪れ、ホームステイをさせていただいたのですが、ここでの経験が僕に多大なカルチャーショックを与え、「世界てむちゃくちゃおもろいやん!」と強く強く心に刻まれ、「もっといろんな世界を、地球を見たい!」と思うようになったというわけです。
人が本当に何かを「やりたい!!」と思ったときには論理的な理由はなく、そこにあるのは純粋無垢な、体の底から溢れ出る情熱だけではないでしょうか。僕の場合、自分の体内から感じる強いドキドキ感、ワクワク感をビシビシと感じ、それと同時に、自分の置かれた環境と将来を少し冷静になって考えたとき、旅に出る事が出来るのは、大学に通っている今が最初で最後のチャンスだと思ったのです。こうして、「世界一周の旅に出る」ということは僕の大学生活の大きな夢になりました。
旅に出る決意をしたのは、出発の約1年前。決意をしてからは、一刻も早く出発をしたいという思いでいっぱいでしたが、もちろんそれなりの準備が必要なので、すぐに出発というわけにはいかないのが現実です。
準備を進める上で、僕の前にはいくつかの壁がありました。主には休学、お金、親の説得でした。休学に関しては、僕の通っていた大学は休学の許可理由が極度に少ないので、旅に出るという理由で休学ができるのか。お金に関しては、旅の資金が1年間で貯められるのか。親の説得に関しては、寺の跡継ぎ長男である僕を、世界のどこにいるかもはっきりわからない、時に危険を伴うかもしれない一人旅に出すことを許してくれるのか、ということです。この記事をお読みの皆様からすれば、僕が壁だと感じていたことはそれほど大したことはないことだとは思いますが、大きな夢を掲げ、手探りで前へ進んで行く前に現れる壁は僕には大変に高いものに感じられました。
「夢を叶えるには、まず周りの人にそれを伝えていくことが大事」とある方が講演会で仰っていました。それを聞いた時には今一つ意味がわかりませんでしたが、旅に出ると決めてから、その言葉を思い出し、積極的に周りの友人に伝えるようにしてみました。はじめは、否定的な言葉をかけられることが多くありました。準備も一切進んでいない状態で、とりあえず旅に出ると宣言しているのですから、反対されるのにも無理はありません。それと並行して準備も進めていきましたが、想像以上に大変で思うように捗らず、正直、自分にはこれほどの夢を叶えるのはやっぱり無理だと諦めかけた事もありました。考えすぎて、なぜ自分は旅に出たいのかということさえわからなくなっていた時期もありました。けれども「地球を体感したい!」という当初の純粋な気持ちを思い出した瞬間、ワクワク感が蘇り、どんどん元気が出てきたときに、「あ、やっぱりほんまにやりたいんや」と再認識することができました。
するとそんな時期から、旅のことを伝えた同じ大学の友人から、僕と同様に休学をして世界一周をした知り合いがいるから紹介する、と別の友人を繋げてくれたり、協力できることがあるかもしれないからもっと話を聞かせてほしいと言ってくれたり、徐々に応援してくれる周りの人がどんどん増えていきました。そして、休学に関しては友人に相談に乗ってもらい、なんとか大学から許可が下り、お金に関しては連日朝から夜までアルバイトでお金を貯め、親の説得に関しては僕の旅の計画と思いを込めたプレゼンテーションを行い、「そこまで本気であれば」と、承諾してもらい、どうにか壁も乗り越えることができました。
こうして、苦労しつつも旅の準備が整い、出発の朝を迎えました。僕は1年間をかけて、一時は諦めかけていた夢を叶えることができたことに、大きな達成感を感じていました。しかしそれは決して一人では叶える事のできなかったことです。旅に出ると決意し、それが可能であった僕の置かれた環境のありがたさ、両親をはじめ、僕の思いを理解し、応援してくれる人のいるありがたさ、健康であることのありがたさ、本当にたくさんのありがたさに、心から感謝の気持ちでいっぱいでした。夢を叶えるには周りの人に伝えることが大切だという言葉の意味も、このとき身をもって実感できました。人は本当に周りの人に支えられて生きているのだと、強く強く感じました。出発の日は、僕の夢が叶った瞬間でもあり、それと同時に、夢の実現に向けて、僕を支えてくれた方々への恩返しをしようという新たな決意をする瞬間でもありました。
そんな決意を胸に、僕の世界一周の旅が幕を開けました。
小さいころは夢を持って生きていたのに、大人になるにつれ、現実というものに目を向けるとどうしても、夢なんて・・・という気持ちになってしまう、という経験をお持ちの方は、この記事をお読みのみなさまの中にも少なからずいらっしゃるのではないでしょうか。しかし夢を持ち、夢に向かって努力する事は、それ自体が生きる希望になります。夢を叶えることももちろん重要ですが、例えそれが叶わなくても夢に向かって努力し、行動したという事実が自分の糧になります。僕の言葉など、経験の浅い、一若者の戯言かもしれませんが、それでも僕は自分自身のこの経験から、夢を持ち生きることの大切さを実感し、今後の人生も夢を持ち続け、挑戦し続ける生き方をしていきます。
何かをはじめるのに、何歳になっても遅いことはないと思います。みなさまどうぞ、夢を持って生きてください。
長文を最後までお読みいただき、ありがとうございました。
三寳寺 田 畑 智 英
|