朝晩の気温が下がり、秋の気配を少しずつ感じるようになってきましたね。最近、夕暮れの空を見上げて、「あぁ、綺麗な夕陽やなぁ」と思う日がだんだんと多くなってきています。「秋は夕暮れ」と言うように、秋は一年の中で最も夕陽が美しい季節だそうです。
夕陽を眺めるのが大好きで、旅先でも日々の生活の中でも、よく夕陽を眺めています。「夕陽」を眺めると書きましたが、もうひとつ同じ読みで、「夕日」という言葉があります。みなさまはこの2つの言葉の違いをどのようにイメージされますでしょうか。どうやら厳密には2つの意味の違いはないようです。「夕日」は夕暮れの時に沈みゆく太陽そのもの、「夕陽」はその太陽を含む、太陽から届く光など、もう少し広範囲での意味として理解しています。
私にとって「夕陽を眺める」という行為は1日の中でも特別な行為です。それは夕暮れの太陽を眺めることのみならず、茜色に色づく空や雲、赤みがかった暖かく柔らかな光に照らされ輝く人々や街並みなど、自然が演出する、夕暮れ時のドラマチックな時間を味わうということです。
世界一周中の密かなテーマのひとつが、「世界中の夕陽を眺める」というものでした。実際に様々な場所で夕陽を眺めることができ、今振り返ってみても、本当に贅沢な経験だったとありがたく思っています。そんなたくさんの夕陽の風景の中でも特に印象的だった風景を、みなさまともぜひ共有したく、そして何か感じ取っていただければ幸いです。
1枚目。チリ・アタカマ砂漠にて。砂漠と言えばアフリカのサハラ砂漠が有名ですが、以外なことに南米にも実は広大な砂漠があります。それがチリにあるアタカマ砂漠です。観光の拠点の街、サンペドロ・デ・アタカマという街に数日滞在し、半日ほど砂漠の観光地を巡るツアーに参加しました時、最後にガイドさんが夕陽スポットを案内してくれました。そこで見た、人工的なものが何一つない、自然が形成したあるがままの広大な砂漠に沈む夕陽は、何とも美しいものでした。
ツアーに参加したみんなが記念撮影。地元のチリ人のカップルにカメラを渡され、写真を撮って欲しいとお願いをされました。快諾し、ポーズをとってもらうと、なんとお熱いキス。さすが南米。日本でいきなりこれはあまりありませんよね。なんせ、人前でのキスなんて恥ずかしいですもんね(笑)。それはさておき、2人とそのバックの夕陽がマッチしてあまりにロマンチックだったので、自分のカメラでも撮らせてもらいました。それがこの一枚。もう、うっとりしちゃいますよね。そしてこの日は奇しくも恋人の聖日バレンタインデー。ツアーのスタッフも粋な計らいで特別にシャンパンを用意してくれ、みんなでバレンタインの夕陽に乾杯しました。
2枚目。トルコ・イスタンブールにて。トルコ最大の都市イスタンブールの夕陽は、街を照らす夕陽の風景の中で、僕が最も好きな風景です。ヨーロッパの文化とアジアの文化が混ざり合い、独特で魅力的なオーラを放つこの街。夕暮れ時に新市街のガラタ塔に登り、旧市街を見下ろすと、そのあまりの美しさに、この街の魅力にすっかり取り憑かれそうになります。
3枚目。モアイで有名な、南太平洋に浮かぶイースター島にて。その島の中心部から15分程歩いた場所に、数体のモアイが立ち並ぶ場所があります。夕暮れ時になると、観光客や地元の人々もこのモアイの前の芝生の広場に集まり、夕陽を眺めます。旅のスタートからほどなくしてここを訪れると、「なんて平和でゆったり時間が流れている場所なんだろうか」と感動しました。夕陽を眺める人々が創り出すゆったりとリラックスした雰囲気、イースター島の祖先の守護者とも言われるモアイの眼差し。この場所での夕陽の風景は、心を癒し、幸せな気分にしてくれました。この風景が好きになり、滞在中は毎日ここで夕陽を眺めていました。
4枚目、5枚目。ギリシャ・サントリーニ島にて。エーゲ海に浮かぶハネムーンの聖地の一つ、サントリーニ島。世界一美しい夕陽が見られる場所とも言われています。地平線に真っ直ぐ沈む夕陽が大変美しいです。ここでも、美しい夕陽を眺めようと、島のスポットに観光客を中心に人が徐々に集まってきます。そしてこれまで夕陽を眺めてきた中で最も印象的な出来事があるのですが、太陽が地平線に沈んだ瞬間、どこからともなく拍手が起こります。そしてその輪が広がり、気がつけばその場にいる全員でこの美しい光景を讃えて拍手をしているのです。様々な価値観を持っていても、本当に美しいものを美しいと思う気持ちは世界共通なのだと実感し、それを共有した世界中から集まった人々の一体感に、とても感動した出来事でした。あの光景は夕陽の数々の光景の中でも最も印象的で、今でも鮮明にそのイメージと感覚が蘇ります。それほどサントリーニの夕陽は私にとって特別な夕陽です。
さて、出会った世界の夕陽の風景をいくつかご紹介いたしましたが、いかがでしたか。癒し、リラックス、幸せ、優しさ、あたたかさ、感謝、感動、美、愛、エネルギー・・・夕陽には、私たち人間にプラスの影響を与えてくれる大きな力があると思います。そんな良い影響を無意識のうちに受けているから、私は本能的に夕陽を眺めることが好きなのだと感じます。みなさまもこれまでの人生と夕陽を繋げてみたときに、良い影響を受けた経験を何か一つはお持ちなのではないかと思います。
最近いつ夕陽を見られましたか? お忙しい毎日をお過ごしかとは存じますが、夕陽の美しいこの秋に、またお彼岸の時期に、少しお時間を作られて、「夕陽を眺める」ことをされてみてはいかがでしょうか?
三寳寺 田 畑 智 英
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