ある婦人が、ズッキーニを植えたが実がならなかったと嘆いていた。きっと受粉を行わなかたったからであろう。とくに家庭菜園など、2〜3株の少量栽培では、受粉なしではほとんどならないのである。キュウリなど受粉なしで実のなる「単位結果」とよばれるものがあるが、おおかたは受粉なしでは実がならない。虫の力を利用する虫媒花、風の力を利用する風媒花がある。風媒花であるトウモロコシなどは、数本ではうまく受粉ができず、ギッシリとつまったトウモロコシは望めないのである。

　わたしも緑と黄色のズッキーニを植えているが、今の時期は、毎朝受粉に出かけるのが日課である。
　ズッキーニも漫然としているわけではない。雌花雄花は、甘い？香りを放って虫たちを呼びよせ、受粉を促している。いかにせん、雌花には数多くの蟻があつまっているが、雄花にはほとんどいないのである。かろうじて1匹いる花を見つけたが、この蟻が体に花粉を着けて、雌花までたどり着くかははなはだ難しい思いがする。そこで人の手が必要となるわけである。
　ある朝、黄色のズッキーニの雄花がない。仕方なしに、緑色のズッキーニの雄花で受粉をおこなった。まだら色のズッキーニができたらと心配したが、それは杞憂であった。

　我が家の朝食を見ていただこう。立派なズッキーニの雌花が添えられている。ズッキーニの花を生でいただくことはしないが、花の中に肉などを詰めてソテーする料理はある。
　それにしても、あしらいものとはもったいない話であるが、実はその日には雄花がさかなかったのである。受粉しなければ、まったく成長はなく、数日後には刈り取られてしまうからである。せめて花を愛でようとの趣向で、朝食の飾り物となったわけである。食事が終わると、パックに入れられ、冷蔵庫に。
　夕食には、薄い衣をまとって天ぷらに大変身、大きいだけにボリュームのある一品となった次第である。

　ズッキーニになることはできなかったが、朝食と夕食にと、その存在感を示すことができた雌花であつたといえよう。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久

　ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

　教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

　寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

　インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

　毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

　諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久