前号のズッキーニの話で、黄色いズッキーニの雌花が咲いたが、黄色いズッキーニの雄花がない。しかたなしに緑色のズッキーニの雄花で受粉をおこなったが、問題はないと書いたが誤りであった。
数本の色の混じったズッキーニが誕生したのである。黄色と緑色の模様は一応ではなく、その模様に規則性はない。食してみると、味にはまったく問題がない。写真では提供しないが、あまり美しくない色混じりもあった。程よい色の混じりは、かえって装飾性に富んだものになったともいえよう。
今ひとつ、蟻さんにも謝らなければならない。雌花ばかりに集まり、雄花にはほとんど来ないと写真まで掲載したが、色の混じったのは5本、私が緑色のズッキーニの花粉で受粉したのが2本、毎朝畑に出かけ様子を見るが、蟻以外の虫がいたことはない。日中過ぎると受粉しなくなるというから、蟻による受粉がおこなわれていたことになる。
黄色いズッキーニの畝と緑色のズッキーニの畝との間には、アーチ型パイプに植えられたインゲンがあるので3メートルは離れているが、やはり蟻さんが受粉してくれたと考えたい。「蟻さん、ごめんなさい」
息子が幼稚園の頃、よく自然観察をさせた。キャベツの上をモンシロチョウが舞っている。のどかな風景のようにも思えるが、キャベツに付いて葉を食べている青虫を見せて、害虫であることを教えた。息子の誕生を記念して植えたレモンに、アゲハチョウが卵を産み青い幼虫が食害しているところ、また触ると、黄色い角を出して威嚇する姿を見せた。
「ちょうちょう ちょうちょう 菜の葉にとまれ 菜の葉にあいたら 桜にとまれ」の唱歌「ちょうちょう」の世界とは、あまりにもかけ離れた世界を見せてしまったようにも思われる。息子に尋ねると、しっかりと覚えており、すこし刷込みが過ぎたであろうか。
野菜を楽しむこともあるが、大自然の営みに改めて感動する。われわれ人間が、目の前の出来事に一喜一憂することはとても大切に思う。心豊かな人間を育ててくれるからである。
そうした人間すべてを、見つめてくださるのが「仏さま」である。見守られていると思うと、心穏やかになること必定のことである。
【刷込】すり‐こみ
生まれてからまもない時期の動物、特に鳥類に多くみられる特殊な学習。目の前を動く物体を親として覚え込み、追従して、一生愛着を示す現象。動物学者ローレンツが初めて発表した。刻印づけ。インプリンティング。
日本国語大辞典, JapanKnowledge, https://japanknowledge.com/ , (参照 2018-07-17)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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