今年は台風が多い。この10年間の8月の平均発生数が4.5個であるから、今年8月の発生数が9個であるのは、例年の2倍ということになる。21号台風は上陸する可能性が高いことから、8月における上陸数は3個となる。例年の上陸平均数が0.5個からすると、やはり今年は異常である。
特に台風7号からの湿った空気が梅雨前線を刺激して、西日本は記録的な大雨となった。各地で河川の氾濫や浸水害、土砂災害が発生して、死者行方不明者が230人となり、平成最悪の災害となった。鉄道被害も甚大で、現在も10路線が運休しており、運行再開が来年春になる路線もある。気象庁は「平成30年7月豪雨」と命名した。
したがって、テレビのニュースからワイドショーまで、台風や集中豪雨の情報が流された。一部であるが、夜で豪雨の中での避難指示は現実的には不可能であることから、災害が想定された場合は、昼間の早めの避難が勧められた。
地震や噴火など自然災害に対して、早めの「警告」や「指示」が求められるようになり、実際には被害が及ばなくでも、「警告」や「指示」の「空振り」を支持する考え方が芽生えてきたように思う。「オオカミ少年」とは、まったく別のことである認識が生まれてきたのである。
しかし、本来「警告」や「指示」をすべきであったが、しそこなってしまう「見逃し」は、あってはならないことである。
多くの報道は、台風の知識を与えてくれ、警戒の喚起にも繋がった。恥ずかしながら今回初めて知ったことが多くある。正確を期するため気象庁の資料により書いてみよう。
「時々」と「一時」
ある現象が断続的に発生し、その発生した時間が予報期間
の二分の一未満であるときは「時々」、現象が切れ間なく発生
し、その時間が予報期間の四分の一未満であるときには「一
時」といいます。
降水確率
予報区内で1mm以上の雨の降る確率を、6時間毎に10%単位
で発表します。例えば、18時から24時までの降水確率が20%
というのは、その期間に1mm以上の雨の降る可能性が100回中
20回あるという意味です。確率が高いと雨量が多くなるとい
う意味ではありません。
台風解析・予報情報
気象庁本庁が行った台風の解析及び予報の成果を通報する
情報。気象庁部内では台風指示報として取り扱う。
12、24、48及び72時間後の台風の中心位置と72時間以内に
暴風域に入るおそれがある領域の予想を予報円(点線)と暴風
警戒域(実線)で示したもの(実況の中心位置は×印)。
5日先までの台風の進路を示す際には、24、48、72、96及び
120時間後の台風の中心位置の予想を予報円(点線)で示す
(実況の中心位置は×印)。
台風の進路は、気象庁がおこなうもので気象予報士にはできないこと、進路は最大5日間の発表であること、24時間内の予報は3時間ごとに発表されることなど、明確となったことである。
今ひとつ、気になることがある。「台風が逸(そ)れて、よかった」という言葉である。逸れることは、その台風が自分以外のところに行ったことであり、誰かが被害を受けていることである。明確な意識ではないが、「自分に被害がなければ」との思いが見え隠れする。時には私も使ってしまうことであるが、さすがに報道番組ではないであろう。
代替えの言葉が見つからない。
【避難指示】ひなん‐しじ
災害が発生したり予想され、急を要する場合に、災害対策基本法に基づいて、市町村長が居住者・滞在者などに対して地域外へ立ち退くよう強く求めること。避難勧告よりも危険が切迫しているときに出される。平成28年(2016)、避難勧告との差異を明確にするため「避難指示(緊急)」に改称。(デジタル大辞泉)
【狼少年】おおかみ‐しょうねん
(1)狼にさらわれて育てられたという人間の男の子。
(2)(イソップ寓話の、狼が出たと言っては大人をだましていた少年が本当に狼が出た時には誰にも信用されなかったという話から)繰り返して同じ嘘をつく人。(日本国語大辞典)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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