ある先生が学会のため京都に向かったが、台風で新幹線が不通となり、三島駅近くで一夜を明かしたという。私も参加予定であったが、事務局に連絡をして取りやめとした。止まった新幹線と我が寺とは歩いて数分、無理なことではあるが、降りて私の所に泊まればよかったのにと笑ったことがある。
新幹線を1ヶ月に10日ほどではあるが利用しているので、遅延や不通に多少敏感である。平成27年6月30日、その日も大学の講義のため乗っていると、小田原駅に着くと、「新横浜と小田原間で、新幹線の車両火災のため不通」とのアナウンスが流れた。沿線火災の不通は、架線に影響なければ、鎮火とともに運転再開であろうが、新幹線自体の火災はそう簡単には開通が望めない。
運転再開を待ち続けるか、在来線での状況も不可能ではなかったが、おおはばな遅刻は免れない。正式なルールではないが、授業開始後30分教員が出講しない場合は休講とする暗黙の了解で学生は帰ってしまう。しかたなく大学に電話して休講の処置をとって、下車して外に出た。警察車両がけたたましいサイレンを鳴らして、空を飛ぶかのごとく、横浜方面に向かうのを見た。
ちょうど12時であったので、友人を呼び出して昼食とした。食堂でテレビを見ると、車両内でガソリンがまかれ火災が発生されていることを知った。これでは当分動かないであろうことは明白であったので、在来線で三島に戻ることにした。それぞれの改札で、事故により旅行中止の証明をもらい、有効期限内であれば、再度この切符が使用できるようにした。「事故旅行中止」「事故返」「誤入鋏」の記入が痛ましい。再利用ができるというが、保存してある。
息子が小学校1,2年生の頃であろうか、日帰りで大坂での「恐竜博」を見に行くこととなった。その頃2階だて新幹線が話題を呼んでいたので、息子が乗りたいという。2階だて新幹線はグリーン車であったが、こんな機会でなければと、二階からの車窓を楽しんだ。
帰路、集中豪雨のため豊橋付近で止まってしまった。いっこうに動かないでいると、車内販売の方がみえて「お子さまがいらっしゃるので、よろしかったら、飲み物とお弁当はいかがですか、車内にはわずかしかありませんので」と声をかけてくれた。進められるままに購入し、2時間ほどであったが、安心して待つことができた。
何年前であろうか、夜8時に新幹線に乗った。台風で遅延が確実であったので、お弁当と缶ビール、お茶2本を購入してグリーン車を奮発した。その頃は、携帯の電源はグリーン車しかなかったからである。三島に到着したのが明け方4時であったが、快適?であった。
爾来(じらい)、わが家は必ず飲み物を持ち歩く習慣ができた。妻は250CCの水ではあるが、必ず鞄に入れている。息子と私は、三島駅の自販機で飲み物を買うのが習慣となっている。
静岡までは、二駅20分ほどであるが、やはり購入する。しない時に限って、電車が止まるような気がする。
ペットボトル1本150円の保険である。一般の保険は、無事に過ごせば終わりであるが、この保険は、無事下車しても飲み物が残るのである。
一度封を切ったペットボトルを、一日中持ち歩くのはいけない。口をつけたペットボトルは、その時から雑菌が繁殖するからである。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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