ある出入り口に点字ブロックが設置されている。点字ブロックには2種類あり、平行した線が突起状で移動の方向を示す棒状の誘導ブロックと、格子状の点が突起状で注意喚起警告を促す点状ブロックとがある。
　写真を見ていただこう。左側の壁に平行して誘導ブロックが設置されているので、これにしたがえば入り口に向かうことがわかる。少し進むと点状ブロックとなるので入り口であることが判る。しかし自動ドアは、片側引き戸で右側が開くのである。すなわち障がい者は右側に1ｍほど移動しなければ入ることができないのである。なぜ点字ブロックの前の戸が開かないのであろうか。
　単純に設置ミスであれば、改善されるはずであるが。うがった見方をすれば、健常者にとって点字ブロックは歩きにくいので、出入り口側ではないところに設置されたとは考えたくないのであるが。

　2ｍはあろうかと思われる塀の中で、庭の撤去工事がおこなわれていた。ひと抱えほどある桜の木の下へ、解体に使われる爪を持った重機が現れた。鉄骨ですら粉砕できる爪は、いとも簡単に、枝を千切りむしっていく。バリバリというと音が、桜の木の悲鳴のように聞こえてくる。こんな伐採の仕方をするのかと思った。通りかかった人も、足を止めて「あー！」と声を上げた。根元から伐採される前にと、スマホで写真を撮った。側にいた現場監督らしき人に睨まれたかのようにも思った。
　あるお檀家さんから、大きなケヤキの木を切るから、お経を読んでほしいと頼まれたことがある。木に切らせていただくことを告げるように、無事に伐採が終わるようにと思いながらの読経で、まず施主が焼香し、現場監督そして職人たちが続いた。
　お経が終わると職人が木に登り、一枝一枝切り落としていく。そこには敬虔な、生あるものの命を奪うことに対しての祈りすら感じられた。
　無事伐採が終わると、施主から酒と寿司がふるまわれた。

　桜の木の伐採の前に、どのようなことがおこなわれたかば知る由もない。
　現代では時間や経費のことを考えると、仕方ないことかもしれないが、とても辛く残念なことであった。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久

　ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

　教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

　寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

　インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

　毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

　諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久