最近テレビを見ていて、気になることがある。日曜の朝、NHK「チコちゃんに叱られる」がブレークしている。5歳になるチコちゃんが質問をして、お笑いコンビナインティナインの岡本隆史をレギュラーとして、ゲストともに回答をもとめる番組である。
　わたしの子供ころ、「なぜだろうなにかしら」という本があった。ともに昔からこうした伝えや伝説を紹介する番組であった。たしかにチコちゃんの問いかけは、現代の人にとっては新鮮であり、60代の人々に取っては、懐かしいものであった。

　着ぐるみのチコちゃんが、いろいろな疑問を投げ掛け、解答者が答えに詰まると、チコちゃんの顔がCGによって突然真っ赤になり巨大化し、「ボーっと生きてんじゃねーよ！」の決めぜりふと共に叱られてしまい、その後専門家に取材をしたVTRを流して答えを掘り下げるという構成で進められる番組である（ウィキペディアによる）。
　そして有名となったフレーズ「ボーっと生きてんじゃねーよ」で、真っ赤になったチコちゃんの顔（表情）は、収録後にCGで組み替え（メイク）されたものであり、岡本をはじめゲスト出演者は、その顔を見ているわけではないという。目も鼻もなくのっぺらした着ぐるみのチコちゃんと演じているのだという。

　それはコンピュータ時代の番組作製としては容認できるが、ところが「ボーっと生きてんじゃねーよ」のフレーズは、容認できない。
　わたしは、我々人間は最初から「ボーと生きよう」と思った人はいないと思う。外的要因や内的要因から、有能な人々からは「ボーと生きている」といわれてもしょうがない結果となることは、あるのかもしれない。決して非難されるような生き方を望むどころか、うまくいきたいと思うのが当然であろう。
　結果的にうまくいかないからといって、「ボーっと生きてんじゃねーよ」といわれるのは、心外であろう。たまたま就職した会社が倒産してしまった人、思わぬ病気で思うように仕事のできない人、あまり人付き合いが得意ではない人、自分の不得手な社会に踏み込んでしまった人等、「一生懸命生きてきたのに」との思いがあろう。

　きっと学校でも社会でも、「ボーっと生きてんじゃねーよ」と言われた人があるのではなかろうか。言っている人は、流行語を言っている過ぎない感覚であろうが、言われる身になってみるとつらいものがある。「虐待」や「いじめ」が問題視される今日、視聴料を取っている放送機関が、いうべき言葉ではない。よい番組だけに、フレーズに溺れてしまったことが残念でならない。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久

　ラジオが唯一の情報源であった時代から、新聞やテレビが加わり、小学生までがパソコンや携帯電話を利用している時代となった。ひと昔前の学生の楽しみというと麻雀とお酒が定番であったが、町から雀荘が消え泥酔した学生の姿は少なくなった。これも学生たちの娯楽に選択肢が増えたからであろう。世の中はあらゆる選択肢が増え、情報のアイテムが氾濫し、多様性の時代といえよう。

　教化活動の基本としては、葬儀や年忌法要を始め、修正会、彼岸法要、施餓鬼会、十夜法要と、あらゆる法要での説法であろう。印刷技術の発達によって掲示板伝道、文書伝道ハガキ伝道がおこなわれるようになった。拙寺でも「ハガキ伝道」や「テレホン説法」の経験があり、教化活動も多様化してきたなかで、時代のニーズにあった教化活動の一つとして、「 願成寺メールマガジン 」と名付けてメールマガジンを発行することにした。

　寺院という特質から、教化の対象となるのはお年寄りという現実は否定できない。また檀信徒全体からすれば、どれほどの人が、インターネットを利用しているかと考えるとその効用ははなはだ微少と思われるが、新しい形での教化活動として実験的に発信することにした。

　インターネットによるメールマガジンの配信は、お寺に足を運ぶことの少ないあらゆる世代の皆さまに語りかけることができるであろう。また拙寺のお檀家さま以外の皆さまとも、お寺とのつながりを持たせていただく方法としては最良と考えております。

　毎月二回とは申せ、浅才なわたくしにとってはかなりの重圧となっていくであろうことは想像にかたくない。三回で中止するわけにもいかず、発信を決意するのに一年もかかった始末である。

　諸大徳の応援をお願いいたしながら、皆さまとの交流の場としていきたいと存じます。よろしくお願い申しあげます。

　天主君山現受院願成寺住職
魚 尾　孝 久