皆さま、春の暖かさが感じられるようになってきましたね。4月は『桜花爛漫の候』と申すように、三嶋大社の桜も咲き乱れ、谷田の国立遺伝学研究所でも桜の一般公開がありました。
私は今、臨済宗建長寺派の中の、御殿場から伊豆の国市までの静岡東部の支所長を務めているので、3月末に、本山である鎌倉の建長寺へ、臨時の支所長会議で行ってまいりました。
建長寺も、ちょうど桜が満開で、大勢の観光客が訪れていました。建長寺に限らず、鶴岡八幡宮なども通りがかって感じましたのは、普段は多い修学旅行の学生は3月末なので見当たらないのですね。その代わり、外国人の方々が非常に大勢見受けられました。
今は車社会ですので、鎌倉では、車で訪れる観光客による慢性的な道路の渋滞に住民たちが困惑しています。通勤通学や買い物への影響のみならず、消防・救急などの緊急車両が遅れる事態になっているようです。また、鎌倉の小町通りは、お土産物屋が並び観光客で賑わっています。しかしそこで問題になったのが、食べ歩きです。観光地の味を気軽に食べられるように、買い食いできるお店が増えた結果、持っている食べ物が、すれ違う人に当たり服が汚れるなどの苦情や、食べ物を道に落としてしまったり、ゴミをポイ捨てして道が汚らしくなるという苦情が多くなってしまいました。そして先日、ついに食べ歩きを規制する条例が可決されました。
三島も寺社が多く、観光に力を入れています。観光客を誘致するだけでなく、その対策をどうするのかにも力を入れてほしいものですね。
4月8日は降誕会でした。降誕会(お釈迦さまのお生まれになった日)は、成道会(お釈迦さまが悟りを開かれた日・12月8日)、涅槃会(お釈迦さまが亡くなられた日・2月15日)と共に、三仏忌の一つです。この降誕会は別名『花祭り』といいます。お釈迦さまは、約2500年前、インドの北の方のカピラという小さな国の王さまとお妃さまの間に生まれました。お釈迦さまは、4月8日に美しい花が咲き乱れるルンビニーという花園で生まれましたので、お釈迦さまの誕生日を花祭りといって祝います。またこの時、空からは甘く清らかな雨が降りそそぎ、生まれたばかりのお釈迦さまの体を清めたといいます。
そこで花祭りでは、花園を象徴した花御堂(はなみどう)の中に、右手で天を、左手で地を指さした誕生仏像を安置し、甘茶をかけてお祝いいたします。
お経は『浴仏偈』を唱えます。
我今潅沐諸如来 (ごきん かんも しじらい)
浄智荘厳功徳聚 (じんし そうねん くんてじゅ)
五濁衆生令離垢 (うじゅう しゅんさん りんりきょう)
同証如来浄法身 (ずんしん じらい じんぱしん)
(訳)
我れ今、諸々の如来に灌沐(甘茶をそそぎ)致します
浄き智慧の功徳をもって荘厳する人々は
悪世(五濁の衆生)の垢を離れて
如来と同じく悟りの浄き法身を体現せんことを
私のお寺、宝鏡院では甘茶の木があります。毎年この時期に、葉を摘んで、揉んで干して、乾燥させたものを一年とっておきます。その一年前に作っておいた甘茶の葉を煮出して、花祭りで使います。また容器を持って来る近所の方には、煮出した甘茶を差し上げています。
また乾燥させた甘茶の葉は漢方薬局で売っているのは知っていました。
宝鏡院のすぐそばに立正佼成会の教会があるのですが、行事の時には宝鏡院の駐車場を貸していることもあり、立正佼成会での降誕会の行事の後、お礼に来た時に、『皆に配っていた甘茶をどうぞ』と甘茶のティーバッグを頂きました。気軽に楽しんで頂けるよう、今はこういうものがあるのだと感心致しました。
天地を指差したお釈迦さまへ甘茶をかけながら、『天上天下唯我独尊』「自分自身の命はかけがえのないものだ。自分だけでなく他の人々の命もかけがえのないものだ。他を思いやる心を持ちなさい。」というお釈迦さまの教えを改めて心に刻みました。
地福山宝鏡院住職
林 晴 雄
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