空を仰ぐのが、好きである。雲ひとつない晴天の空もよいし、雲の模様を着た空もまたよい。しばらくの間眺めていると、いやなことを忘れ不思議と元気が出てくるのである。お金がかからない私のリフレッシュ方法である。
三島で空を仰いでいると、飛行機が、時には飛行機雲を引きながら西に向かって飛んでいく。飛行機の音が聞こえてくる位置と、実際の飛行機の位置とのズレがじつに面白い。時には3機の飛行機を、同時に見ることができるのである。
何処へ行くのであろうか、いずれの航空会社であろうかと思いを馳せる。多少の高度が違うと、高いところの飛行機は海外へ行くのか、低いのは国内かと、何の根拠のない想像が頭をよぎる。
もう20年も昔のことであるが、伊豆の下田に子供を連れて海水浴にいった。いつものように空を仰ぐと、次から次へと飛行機が東の空に向かって飛んでいく。
滅多に乗ることのない飛行機だけに、夢を与えてくれる存在であった。
あるとき、息子が「フライトレーダー」という携帯アプリを教えてくれた。Flightradar24(フライトレーダー24)とは、飛行中の民間航空機の現在位置をリアルタイム表示するウェブサイトならびにスマートフォン・タブレット向けアプリケーションである。
飛行中の機体を地図上から選択すると、「便名」「Aircraft - 機種」「Registration - 機体記号」「Altitude - 飛行高度」「ベーシック国語」「Vertical Speed - 垂直速度」「Speed - 速度」「Track - 飛行方位」「Latitude/Longitude - 緯度・経度」等の内容が表示される。
この原稿を書いている今、30日9時17分には、雨が降っており飛行機の姿はもちろん、音も聞こえないが、全日空859便東京発ホンコン行が通過した。高度7316m速度736km/hである。さすが軍用機は表示されることはないが、救難ヘリまで動きを表示することのできるすごいアプリである。暇つぶしにはまことに面白いものである。
三島上空は、西行きの航路であり、下田は東行きの航路であることも分かり、時間帯によっては次々と見ることができるのである。
ある朝、まだ布団のなかで携帯をいじり始める。大方のニュースと天気予報を見終えると、フライトレコーダーの登場である。大方の空港が始発便前の時間帯であるが、中部国際空港セントレアで動きがある。全日空Boeing777-281は離陸すると、常滑沖を旋回してまた空港に戻って来るではないか、アクシデントかもとドキッとした。滑走路を通過してまた同じコースを辿ること6回である。
調べてみると、タッチ&ゴーの訓練であることがわかった。
今でもリフレッシュのために、ときどき空を仰ぐが、遠い異国に夢を馳せることはなく、携帯を取り出す男となってしまった。少し残念である。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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