孫が産まれた記念に、レモンを植えた。30年ほど前に息子が産まれた記念に「ドウダンツツジ」を植えたのに倣ったからである。境内の四つ目垣の更新に手間暇、お金がかかることから、生け垣を選んだ次第である。
孫は3歳7ヶ月であるが、1年生苗を植えたので、レモンの木は1歳年上となる。昨年は小さな実が3つ着いて、レモンケーキを作った。木を大きく育てるには、摘果するが良いのであるが、孫も私も摘果は良しとしなかった。
孫と競争するかのように、レモンの木は順調に育ち、今年は30個近い実を着けた。生理的落果の後、9個が着いている。またレモンは周年開花結実性があるので、現在3度目の花が咲いている。2度目に咲いた花からまた30個近い実が着いており、ほとんど生理的落果がない。大豊作である。
毎朝起きると、ベランダのレモンを見に行く。まず水をやって、健康状態をチェックする。新芽の成長とともに、アゲハチョウの飛来である。どこかに案内図でもあるかのように、飛来して卵を産み付けていく。気をつけなければならないことは、葉の裏にも産み付けるのである。卵で見つからなかったものは、当然幼虫になってしまう。すぐにとらなければ、丸坊主になってしまう。
新芽の葉の脇には、必ず棘(とげ)がある。孫が怪我をするといけないので、見つけ次第とる。新芽のときは、軟らかく爪で欠くことができる。よってレモンの木には、1本も棘がないのである。
世話は大変でもあるが、毎日孫に会っているようで、孫の成長とともにたいそう嬉しい。孫は自分のことを「いーちゃん」ということから、レモンの木は自ずから「いーちゃんのレモン」と呼ぶ。
今年の遅かった梅雨が明け、連日の猛暑が続くであろう。孫とそう背丈の変わらないレモンの木にとっては、40個近い実はとんでもない数である。このままでは、実は大きくならず、隔年結実を起こしてしまうことは間違いない。少し大袈裟であるが、8月1日をもって摘果を断行する。
「いーちゃんのレモン」でなければ、早くに摘果されていたであろう。作物を作るには、間引きと摘果は常套手段であるのだから。
この5月、2人目の孫が誕生した。また、この秋に記念植樹をしようと考えているが、まだ木の種類は決まっていない。
【生理的落果】せいりてきらっか
開花直後の花や果実が風や雹(ひょう)、凍霜害などの物理的障害や病害虫、農薬害、あるいは成熟によっておこる以外の理由で落下することをいう。この落果は果樹の種類によって特定されるが、果梗(かこう)(果物のつく柄(え))基部、同先部のへたとの接点、へたや萼(がく)と果実との接する部位などに形成される離層によっておこる。生理的落果は大別して早期落果と後期落果の2回からなる。
早期落果は、果樹によって異なるが、開花直後から2〜3回の波をもって現れる。たとえばリンゴでは、第1回目は開花直後から始まって2〜3週間続き、その後数日たって第2回目が始まり、2〜4週間続く。アメリカではこの2回目の落果は6月ごろ現れるためにジューン・ドロップJune dropとよばれる。早期落果はモモ、アンズ、ウメ、スモモなどの核果類や、柑橘(かんきつ)類、カキ、クリなどにも多くみられる。この原因としては次のようなことが考えられる。雌しべが不完全あるいは不受精による単為結果などの場合には開花後早々に落果する。また果実の発育途中での落果は、胚(はい)の発育停止、種子数の不足、同化養分の不足や、窒素過多または不足、乾燥などにもよるものと考えられ、ジューン・ドロップの類はこれである。後期落果は収穫前落果ともいい、収穫期の間近にみられ、リンゴ、柑橘類、カキなどに多い。落果は植物ホルモンの量と関係があり、オーキシン、サイトカイニンの含量が低く、エチレンの生成、アブシシン酸の含量が多いときにおきやすい。「世界大百科事典」
【周年開花結実】
レモンなど、環境が良いと周年で開花し、エンドレスで実を着けること。
【隔年結実】かくねん‐けつじつ
果実のなり方が豊作と凶作とを一年おきに繰り返す現象。ミカン、カキ、クリなどにこの傾向が見られる。豊作の年に果実が多くの栄養素を取り、翌年の花芽の発育を低下させるために起こるとされている。隔年結果。(ジャパンナレッジ)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
|