八月下旬になって、連日の猛暑も若干ではあるが緩んできたようにも思うが、今年も連日の猛暑に振り回されたようである。
わたしの携帯電話に防災アプリがいれてあり、気温が28〜31℃になると「厳重警戒、激しい運動はひかえよう」とメッセージが届く。31℃以上になると「危険、運動は中止しよう」と、連日振り回された次第である。時には猛暑を、やるべき仕事をサボる免罪符としているのではないかとの危惧するところもある。
灼熱地獄というと言い過ぎかもしれないが、ときに「火焔山」を連想してしまう。西遊記では、玄奘三蔵が天竺にお経を求める難所のひとつとして登場してくるのが火焔山である。赤い泥岩の山肌が、陽が当たると火が燃えているようで、気温はかるく40度を越え火焔状態という。古典の世界では、「火焔山」といえば、灼熱の象徴といえよう。
三蔵法師が、孫悟空、猪八戒、沙悟浄を友として、猛暑に立ち向かったことを思うと、このまま猛暑に、してやられてしまうわけにはいかない。猛暑に一矢を報いるなどと、大それたことを言うつもりはないが、なにか猛暑と仲良くできたならば、と思ったわけである。
相手に不足はない。そうはいっても、何をしたならば良いのであろうか。戦って勝てるものではない、熱中症の返り討ちに合うこと必定である。
家庭菜園に行くのも、朝早くか夕方である。畑で真っ赤に実ったトマトを目にしたとき、これだと思った。家庭菜園では大型トマトの栽培は難しいので、ミニトマトを作っている。今年は少し変化を求めて、イタリアントマトの「ロッソナポリタン」も栽培した。大方のイタリアントマトは、生食ではなく加熱用であるが、この種はとちらにも良いというので挑戦したのである。
毎日生食していたが、猛暑を利用してドライトマトにしようということである。早速、収穫したトマトを半分に切って網に乗せ、炎天下に干しに出る。このときほど猛暑が、楽しみに思われたことはない。散々猛暑を嫌っていたが、はなはだ恐縮ではあるが、もっと熱くなれとの思いである。日本特有の高湿度が気になったが、4日間の天日干しで素敵なドライトマトが完成した。
刻んで炒め物に、スープの出汁に、そのままバルサミコ酢とオリーブオイルをかけて、ワインの友にと楽しんでいる。
猛暑の夏であったが、お陰さまで少し楽しい夏を終えようとしている。秋もまた楽しみたいと思う。四季の変化は、我々日本人を心豊かな人にしてくれると思った。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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