今年もあと30日ほどで終わりである。1年の過ぎるのが、異常に早いのである。子どものころは、まさしく「あといくつ寝るとお正月」と、月日のたつのと時間の過ぎるがとても遅かった記憶がある。
大人は毎日忙しく働くので、あっという間に一日が終わり、1年が終わってしまう感があるという。その日その日の、なすべき用事をこなすだけの毎日であるからである。
そんな毎日であるが、食生活は意外と豊かであることに気がついた。その最大の理由は、日本には四季があるからであろう。時季の食べ物があって、旬を楽しむ文化が生じてきたのである。
お正月が明けると、なんといっても野菜が美味しい。霜を浴びた野菜が甘くなるのである。「寒締め野菜」などと銘打って売られているが、この時期の野菜はみなそうなのである。白菜、大根、ほうれん草と、むしろあまり手を加えず、野菜そのものの美味しさを味わうのである。
2月になると、かき餅をつく。いわゆるお正月と春のお節句との間に、お餅を食べようということである。ヨモギ、大豆、ごま、青のりをいれて、塩味で楽しむ。農閑期でのイベントというところであろう。
2月も末になると、野菜が頭立ちしてくる。いわゆる菜の花であり、辛子和えは春の到来を伝えてくれる。
そろそろ終わりになる白菜やネギ、大根のたっぷり入った鍋がラストスパートにはいったかのように続く。鍋の「紅葉おろし」は、大人の趣向である。どうもチューブ入りや、大根おろしに一味唐辛子を加えたものが幅をきかせているようだが、手作りすべきである。
大根に箸で穴を空け、そこに種をとった唐辛子をいれて、おろし金でおろすだけである。穴の数が唐辛子の量が辛さを決めるので、普通の大根であれば3つぐらいがよいであろう。また冬でも暖かい部屋でのザルうどん、たっぷりの刻みネギと紅葉おろしも、最高である。
頭立ちの始まるキャベツの大量消費を企て、お好み焼きを作る。ここに静岡ならではの隠し玉をつかう。秋に冷凍しておいた小分けした生の桜エビである。桜エビ漁は、おおよそ4月と10月に解禁となる。時期になると、マーッケットの店頭にならぶ。以前メルマガでも紹介したことがあるが、生シラス、生桜エビ丼はこの時期最高のグルメである。冷凍物となるので生食はしないが、お好み焼きには贅沢の感である。
ただ大量消費は、余り物をかたづけるとの感を持たせないことが肝要であろう。
それに続くタケノコ、山菜、スナップえんどうにそら豆と、じつに豊かな食生活である。
それに比べ、日々の仕事に追われがちな小生、負けずに心豊かなになりたいと思った。そうだ、来年のキャチフレーズは「心豊かに」決めた次第である。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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