新コロナウィルス感染防止のためすべての行事が中止となり、わずかな法務と家庭菜園に邁進する毎日である。農道にはたくさんの人たちがウォーキングしているが、用水路を挟んで十メートル以上離れているので、人に接することはない。毎日菜園に出かけ、夏野菜の準備である。
今収穫しているものは、スナップエンドウ、そら豆、春菊、リーフレタスなどである。菜園で最も忙しいのが、春と秋の種まきや苗の植え付けである。ところが、この時期は春のお彼岸、秋のお彼岸であり、思うように菜園の仕事ができないのが悩みである。お寺の仕事が最優先であるので、菜園の仕事すべてを何とかしようと考えるのではなく、菜園の仕事に優先順位づけ、対処することにしている。種まきや植え付けが遅れ、収穫が遅れ、草取りが後回しにされ、虻蜂取らずになってしまうのが現実である。
欲をかいていろいろな種類の野菜を作るが、そこでこのシーズンはこの野菜に力を入れようと決め、最優先の手入れをすることである。今年選ばれたのが、「そら豆」である。タキイ種苗の「仁徳」に決め、一房50g前後3粒入りを目標とする。毎年作つけるが、病気が出たり虫にやられたり、妻とふたりが楽しめる程度の収穫である。今年は、少なくともスーパーマーケットで売られている「そら豆」に負けないものを作ることが目標である。
2月には、鹿児島産の「そら豆」が店先に並ぶので、4月下旬に収穫できるであろう我が家の「そら豆」を夢見ながら、早速買って食べてみる。収穫してから数日たっているのであろうか、初物の喜びは薄い。
勝ち負けを云々するつもりは毛頭ないが、どんなプロの野菜であっても、家庭菜園の野菜が勝てるのは、新鮮さである。このところ朝夕に「そら豆」を茹でて食べるが、収穫して一時間とたたず口に入れているのである。特に豆類とトウモロコシの味は、時間との勝負である。
11月1日に播種、12月中旬に定植、2月下旬暖かくなり始めると、一株に十数本くらいの芽が出てくるが、株の精力に応じて、5〜7本にして、倒壊防止の養生をする。3月になると花が咲き小さな実がなり始める。株もとから10節ぐらいまで実をつける。
毎日の観察で、まず病気の出た株は、伝染を防ぐためにすぐに抜く。形の悪い実は早めに摘果する。1節に2果ついた場合には、小さい果を取る。株の頂点は、必要以上いらないので、摘み取る。そして追肥、病虫害の防除によって、立派な「そら豆」が誕生となるのである。
おかげさまで、そこそこの「そら豆」ができた。
立派な「そら豆」はとても美味しいのであるが、いささか心憂いものがある。もう少し特化しないで、肩を張らないで、作ることも大切なように思う次第である。家庭菜園だから。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
|