たびたび家庭菜園の話で恐縮であるが、長く家庭菜園をおこなっていると、マンネリ化してくる。そこそこの野菜はできるのであるが、その年その年で目標を持つことで元気をいただく。
家庭菜園の心得というと大袈裟であるが、たくさんできた野菜を人さまに差しあげるときには、少なくともマーケットで売っている野菜よりも、良いものであることが大切である。マーケットの野菜は、比較的リーズナブルものが多い。しかし八百屋さんは、庶民的な野菜から、料亭で利用される野菜まで幅広い商品を扱っており、家庭菜園の野菜など比較にならない野菜もある。もらってくれた人が、本当によかったと思える品質であることが肝要である。
できた野菜を家族に無理強いしないことである。あまり美味しくもない、好きでもない野菜を毎日食べなければならないのは、閉口しているのかもしれない。
また、できた野菜を家族に調理させるのではなく、自分で調理することも大切だあると思う。家庭菜園ばかりでなく、自分の楽しみを周りの人に強いてはいけないのである。
ところで、このところの家庭菜園での作業は、ズッキーニ20株の世話である。毎朝5時過ぎに畑に行き、茄子、トウモロコシ、キャベツ、カボチャ、胡瓜、トマトとご機嫌をうかがう。虫に食われていないか、病気が出ていないかと、見回るのである。
そしておこなうのが、ズッキーニの授粉である。「受粉」と「授粉」の区別をしておこう。
【受粉】じゅ‐ふん
種子植物で、花粉が雌しべの柱頭につく現象。その結果受精が行なわれる。花粉の出所によって自家受粉と他家受粉とに分けられる。花粉の移動は風媒・動物媒(虫媒・鳥媒など)・水媒などによる。
【授粉】じゅ‐ふん
(スル)花粉を人の手で雌しべの柱頭につけること。人工授粉。
まず、雄花を取り、花びらを取り除いて雄しべだけにして、雌花の柱頭に花粉を着けるのである。授粉である。毎日およそ10個ほどの雌花が咲くが、時として雄花がないときもある。授粉をすると、8〜9割着果する。虫たちに任せると、着果率は1〜2割であろうか。着果率を上げるためには、朝9時までの授粉が欠かせない作業となる。数日で立派なズッキーニの収穫となる。傷つきやすい野菜なので、丁寧な扱いが必要である。
栽培方法や情報は、塚原農園の動画を参考させていただいている。塚原氏は、「授粉」を「花あわせ」と表現されている。
日本国語大辞典を調べてみる。
【花合】はな‐あわせ
(1)人々が左右の二組に分かれ、花(おもに桜)を出し合って比べ、または、その花を和歌に詠みあったりして、優劣を競う遊び。花くらべ。《季・春》
(2)花札を使ってする遊び。同じ月の札を合わせ取り、できた役と取った札の点数を競う。
授粉の意味はなく、ネットではもっぱら花札の記事ばかりである。「花あわせ」は、塚原氏の造語であろうか。無粋な作業を、素敵な言葉に置き換えていることに感心させられた。私も利用させていただこう。
早速、調理にかかろう。ズッキーニというと、油炒めが中心であるが、少し変わった調理を紹介しよう。らせん状野菜スライサーで、麺のように刻む。熱湯で10秒ほどすすぎ、青臭さを取れば完成である。お好きなドレッシングでいただく。爽やかな一品である。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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