近年、異常気象が指摘され、世界的に台風、豪雨、高温、森林火災などの被害が発生している。その原因のひとつに地球温暖化が叫ばれているが、その対策は各国の思惑から遅々として進まないのが現状である。
8月17日に浜松市で、観測史上最高気温の41.1℃を記録した。最高気温は内陸部の専売であったように思うが驚きである。
当然、三島の気象も異常であった。7月一ヶ月間の降水量は817.5mmであり、戦後最高を記録した。昨年が211.5mm、一昨年が109.0mmであったので、突出ぶりがうかがわれる。梅雨が明けていないといいながらも、雨が一滴も降らなかったのは、6日間だけであり、当然ではあるが日照時間は50.5時間で、昨年の91.2時間、一昨年が210.9時間あったことからもその異常さが知ることができる。
雨量が多かったが豪雨になることはなく、幸いにも災害は発生せず、9月1日号に記したように三島楽寿園小浜池が59年ぶりに満水になるという喜ばしい現象が生じた。
一方8月になると、一ヶ月間の降水量は72.0mmで、昨年が219.5mm、一昨年が103.0mmであったので、雨が少ないことが判る。したがって日照時間は257.3時間と7月の5倍であり、雨が降ったのは4日間だけであった。そればかりか、最高気温は8月1日の31.6℃が最低であり、連日35℃を超える日も多かった。16・17日には37.3℃を記録して、一ヶ月間の平均気温も29.2℃と最高値を更新しており、例年よりも2℃以上も高かったのである。
家庭菜園も、7月は雨ばかりで畑を耕すことができないため種まきの準備ができず、やっと8月になって晴天になって畝作りをしたが、今度は本格的な灌漑設備のない畑では、また種蒔きができなかった。8月に野菜が高騰したのも無理のないことである。
9月になっても残暑に悩まされたが、適当な雨によって野菜たちは元気づいた。8月ナス1本が100円近かったものが、9月中旬には半値になった。判っていることでは、3日の晴天で1日の雨が理想ではあるが、望むべきもないことである。
こう異常気象に悩まされると、いささか不安が生じた。それは彼岸花である。例年であれば、彼岸の入りに花の芽が出始め、中日には満開となり、彼岸明けとともに花の生涯を閉じるのである。まさしく彼岸花である。
お彼岸に先立って、9月10日までに、土手などの草を刈る。遅くても早くてもいけない。遅くなると、出始めた彼岸花の花芽を切ってしまう。早すぎると、草の中の彼岸花になってしまうからである。
草を刈りながら、今年のような年には彼岸花の開花も狂ってしまうのではないかと心配をした。しかし、それはわたしの杞憂(きゆう)であった。彼岸花の体内時計は、多少のことでは動じることもないことを知った。
今年ほど彼岸花を愛おしく感じた年はない。
【彼岸花】ひがん‐ばな
ヒガンバナ科の多年草。中国原産といわれ、古く日本に渡来し、本州以西の各地の土手、路傍、墓地などの人家の近くに生え、また、まれに栽培もされる。高さ三〇〜五〇センチメートル。地中にラッキョウに似た鱗茎があり外皮は黒い。秋、葉に先だって花茎が伸び、頂に六個の花被片をもつ赤い花が数個輪生状に集まって咲く。花被片は長さ約四センチメートルの披針形で外側に巻き縁がちぢれている。花後、鱗茎から線形の厚い葉を叢生する。古くは救荒作物の一つとされていた。全草に有毒成分を含むが、煎汁を腫れもの・疥癬(かいせん)などに塗ると効果がある。漢名、石蒜。まんじゅしゃげ。しびとばな。てんがいばな。ゆうれいばな。すてごばな。はみずはなみず。学名はLycoris radiata 《季・秋》
【杞憂】き‐ゆう
(「杞」は中国古代の国名。その国の人が、天のくずれ落ちることを心配して寝食をとらなかったという「列子‐天瑞」の故事から)
必要のないことをあれこれ心配すること。無用の心配。とりこし苦労。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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