秋を迎え、三島では稲刈りが最盛期である。この地区は、田植えも稲刈りも、比較的遅いように思う。昔は二毛作がおこなわれ、冬は麦を作っていること多かった。したがって麦の収穫が終わってからの田植えとなり、必然的に稲刈りが遅くなるのであるが、私の周りでは冬作はまったくおこなわれていない。細かい事情はともかくとして、田植えと稲刈りは、見る者にとっては、最高の風情である。
現在の稲刈りは、3条、5条のコンバインが自由自在に動き回り、わずかな時間で終わってしまう。作業している人たちは大変であろうが、見ているのは楽しい。コンバインのお尻から脱穀された稲わらが結束されて吐き出されてくる。一瞬のうちに、刈取り、脱穀、精選、そして稲わらの結束がなされるのである。
ふと、隣の田んぼを見ると、稲わらは細かく裁断され、田に撒かれていく。それぞれの用途にしたがって処理されていくのである。オペレーターと伴走する人、二人だけである。
昔は、田植えも稲刈りも一族総出で、一列に並んで作業をしていたが、今その光景はない。
当時の主婦は、手伝いの人たちに振る舞う食事の支度も重要な仕事で、ご飯はかならず「お赤飯」であった。
何もお手伝いをするわけではないが、朝になるとお寺にも重箱に入ったお赤飯を頂戴する。豊作を感謝いたし、仏さまそしてご先祖さまにお供えするのである。お聞きすると、朝2〜3時から支度をするそうである。無論、日中はみなと同じ作業をする。農家の主婦の大変さを垣間見る次第である。
結果的には、私たちが食するのであるが、ゆめゆめ趣旨を取り違わないようにしなければならない。
考えてみるに、我が家でもお米を食べる量が少なくなってきた。パンや麺類と食が豊かになったともいえるが、朝炊く2合のご飯を仏さまとわれわれ夫婦で食する。ときには余ることもある。
仏さまにお供えすることがなかったならば、ご飯を炊かない日があるのではなかろうか。改めて、お米に感謝した次第である。
【コンバイン】(combine)
(1)組み合わせて結合すること。また、兼ね備えること。
(2)刈取り、脱穀、精選の機能を兼備した農機。複式収穫機。刈取り脱穀機。
(ジャパンナレッジ)
【オペレーター】(operator)
機械の操作をする人。電話交換手、計算機械の操作者、映画技師、無線通信士など。
(ジャパンナレッジ)
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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