皆さんは、「カーボロネロ」というイタリア野菜をご存じであろうか。お寺周辺の何でも食べる鳥たちはよく知っていて、グルメであるようである。
日本名は「黒キャベツ」といって、キャベツの原種である「ケール」に近く、結球しない野菜である。ほとんど近在のマーケットでは見ることがない。三島でも、レストランに直接納めている農家では作られているが、ネット販売では1キロ2〜4,000円+送料である。
やはり、一般家庭では無理であろうか、家庭菜園などでも栽培されていないようである。
わが願成寺農園は、物好きな住職であるので、当然のごとく冬の野菜である大根、白菜、小松菜、法蓮草と肩を並べて栽培されている。秋口に播種、10月になったならば定植、後はほったらかしであるが、アブラナ科であるので青虫とアブラ虫がつく。有機栽培を目指しているのではないので、そのときには消毒をする。菜の花が咲く時分、黄色や白い蝶が舞っていると風情があるように思う人もいるが、家庭菜園をする人にとっては、すべてを虫除けネットで覆うか、消毒をするしかないのである。
息子には、昼も夜も蝶々には気をつけるように教えた記憶がある。
その黒キャベツは真っ黒で縮れており、見た目には決してスマートでないが、じつにスーパースターである。栄養は、ビタミン、ミネラル、カリウムが多く、優等生であるという。
また、その調理方法も多彩である。炒め物に始まり、パスタ、ロールキャベツ、お好み焼き、スープや鍋物の具、 我が家では、毎朝の味噌汁の具としてかならず入る。ワカメと黒キャベツは、色合いが被ってしまうが、豆腐や蕪などは豪華な色合いとなる。そして何よりもすごいのが、決して煮崩れしないことと、癖(くせ)がないことである。鍋や味噌汁など、最初から入れても大丈夫である。
作りはじめて5年ほどになる。小松菜を播き損なってもお店で購入できるが、黒キャベツは自作のみである。じつに豊かな食生活である。
こうした黒キャベツを狙うやつがいる。願成寺農園は、いわゆる里山の出発点である。ここから箱根西麓斜面が始まるのである。よって多くの動物が集まってくる。空を舞うトンビ(鷹?)、白鷺、ゴイサギ、黒鷺、川鵜と、ときにはカワセミの姿を見ることもある。そしてスズメ、カラス、ムクドリである。
ムクドリは、数十羽で飛来して、一晩ですべてを食べ尽くす。小松菜や青梗菜は、柔らかい葉先だけを食するが、黒キャベツは葉脈を残してすべてを食べ尽くすのである。ひょっとしたら、ムクドリも黒キャベツが健康によいことを知っているのかもしれない。
このメルマガを読まれた方は、ムクドリに願成寺農園に黒キャベツが植えられていることを内緒にしてほしい。
そんなムクドリであるが、春たけなわ耕運機で畑を耕していると、耕運機の音を聞きつけて十羽ほどで飛んでくる。耕された土の中から、コガネムシの幼虫など食べてくれるのである。勝手ではあるが、ムクドリが可愛らしく思う。
「ミミズは畑を柔らかくしてくれるので食べないでね」というが、彼らは(彼女らもいるであろう)お構いなしてある。
でも、良き友といえよう。
天主君山現受院願成寺住職
魚 尾 孝 久
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